第215話 まとまらない気持ち

 織部の話を聞いて部活中ずっと結衣の事を考えていたが、結局答えは出なかった。 

 むしろ考え過ぎたせいか余計に頭がこんがらがってしまい、逆にどうすればいいかわからなくなってしまう。



「一体俺はどうすればいいんだ?」



 この問題を解決する方法は簡単である。それは葉月の頼みを承諾することだ。

 そうすれば葉月も結衣もお互いハッピーになるはずなのに。俺はその選択を選べないでいる。



「ずっと結衣達の事を考えていたせいで全然練習に身が入らなかったし。珍しく慶治からは心配されたな」



 結局答えが出ないまま練習を終えた俺は、昇降口へと向かっている。

 この日は練習に身が入らないまま部活が終わってしまった。



「全く。余計な問題ばかり俺の元に舞い込んでくるな」



 結衣と葉月の間を取り持つ相談を葉月から受けた後、俺はずっと悩んでいる。

 結衣の思いが成就するなら喜ぶべきだけど、何故かその事を素直に喜べない。



「一体俺はどうしたんだろう」



 春先の俺ならその頼みを承諾して、友人の恋路を応援していたに違いない。

 だが今の俺はどうだ? 葉月と結衣が付き合う事に対して、モヤモヤとした気持ちを抱えている。



「やっぱり織部の言う通り、考えるしかないか」



 この気持ちに決着をつけないと何も始まらない。

 幸い葉月からは時間をもらえている。なのでこの期間色々とじっくり考えてみよう。



「俊介君!」


「結衣!? こんな遅くまで学校に残ってどうしたんだ?」


「私も今日は部活があったんだ。それで遅くまで残ってたの」


「そうだったのか。そういえば料理部は運動部のように頻繁に部活をしてたな」


「うん! この前の文化祭の出し物が好評だったから、生徒会の人が臨時で部費を追加してくれたんだ」


「よかったじゃないか。これで料理部も活動の幅が広がるな」


「うん! ありがとう。これも1学期の時、俊介君が協力してくれたおかげだよ」


「俺は別に何もしてないよ。これも全て結衣達料理部が頑張ってイベントを盛り上げた結果だ。むしろ自分達の事を褒めた方がいい」



 あれは結衣や星乃も含めた料理部員が頑張った結果なんだ。

 だから俺は何もしていない。褒めるなら結衣達を褒めるべきだ。



「俊介君は部活帰り?」


「あぁ。俺も丁度今部活が終わって帰る所だ」


「それなら途中まで一緒に帰ろう」


「えっ!? 今なんて言った?」


「一緒に帰ろうって言ったんだけど、やっぱりダメかな?」



 駄目かなと言われて、駄目と断れるはずがない。

 たださっき葉月の相談を受けた手前、どうしようかいいか考えてしまう。



「もしダメなら私、1人で帰るよ」


「大丈夫大丈夫!? 俺は全然大丈夫だから!?」


「本当?」


「本当だよ!? だからそんなに悲しそうな目で俺の事を見ないでくれ!?」



 こんな涙目になって懇願している結衣の事を見たら、断る事なんて出来ないだろう。

 むしろここで俺が結衣の事をどう思っているか、はっきりさせた方がいい気がする。



「そしたら早く学校を出よう。最近日が落ちるのが早いから、暗くなる前に帰った方がいい」


「うん!」



 嬉しそうな表情をする結衣と一緒に昇降口へと向かう。

 それから2人で自転車を取りに行き学校を出た。


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