第214話 親衛隊のアドバイス
「葉月が‥‥‥結衣に告白か‥‥‥」
正直これ程嬉しいことはないはずだ。
結衣も葉月の事が好きで、葉月も結衣の事が好きなのでお互い両想いは確定といってもいい。
シンデレラの劇もお互い主演を張って最優秀賞を受賞した。これほどお似合いのカップル他にいないだろう。
「なのに‥‥‥何でこんなにモヤモヤとした気持ちになるのだろう」
2人が結ばれたら俺だって幸せな気持ちになるはずなのに。
俺はいつから人の幸せを憎むような嫌な奴になったのだろう。
「何かお悩みのようですな、風見氏」
「織部か。いつからそこにいたんだ?」
「さっきですぞ。小谷松氏を捕獲するために裏庭に来たつもりでしたが、まさか風見氏がいるとは思ってませんでした」
「本当にそれだけの理由で、ここに来たんじゃないだろうな?」
「拙者は嘘をついていませんぞ!? 現に拙者がここに来たのもたまたまでござる」
「それもそうか。こんな偶然、よくあることだしな」
「本当です。それにしても小谷松氏もいい加減ですね。風見氏に結衣様との仲を取り持ってくれなんて」
「前言撤回だ!! 今までの会話、全部聞いてたんじゃないか!?」
盗み聞きをするなんて悪趣味な奴だ。
だが今は織部の事を怒る気分には慣れず、ぼーーっと話を聞いてる。
「風見氏、嫌な事はちゃんと断った方がいいと思いますぞ」
「別に葉月の提案が嫌ってわけじゃ‥‥‥」
「それじゃあ風見氏は結衣様が小谷松氏と付き合ってもいいんですね?」
「っつ!?」
「もう1度聞きますぞ。結衣様と小谷松氏が付き合っても、風見氏はいいんですね?」
「それは‥‥‥」
正直どうしたらいいかわからない。今の俺にはその事まで考える余裕はなかった。
「もし風見氏が小谷松氏と結衣様の仲を取り持つことを即決していたなら、我々茅野由衣親衛隊は風見氏もまとめてお仕置きしないといけませんでした」
「何故!?」
「それは自分の胸に聞いて下さい。でも、その様子なら安心ですね。しっかり自分の気持ちに整理をつけるために考えて考えて、最善の答えを出してください」
「わかった」
「風見氏ならちゃんと自分の気持ちに答えを出せると拙者は信じています」
まさか俺が織部に励まされるなんて思わなかった。
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたからか、織部は不思議そうに俺の顔を見ていた。
「どうしたんでござるか、風見氏? そんな表情をして?」
「いや、まさか織部に励まされるなんて思ってなくてな」
「失礼な。拙者と風見氏は結衣様を通じて知り合った同志じゃないですか」
「さすがにそれは言い過ぎだけどな」
俺はこんなSMを信仰する集団に入った覚えはない。
確かにいくつか共通点もあるけど、織部が言う程仲良くはない。
「それでは拙者は行きますね」
「もう行くのか?」
「はい! 他の親衛隊から、小谷松氏を捕獲せよと指令が出てますので」
「織部も大変だな」
「風見氏程ではないでござるよ。では!」
そう言って織部はどこかへ行ってしまう。
彼の神出鬼没なその姿はまるで現代に現れた忍者のようである。
「自分の気持ちに整理をつけろか。確かにそうだな」
こんな中途半端な気持ちじゃ、葉月や結衣に申し訳ない」
しっかり俺なりに気持ちの整理をつけて、葉月に答えを言おう。
「まずい!! そろそろ部活の時間だ!?」
このままだとまた練習に遅刻をしてしまう。だから俺は急いで部室へと足を運び練習を始めた。
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