第181話 体育祭のお土産話
あれから数十分の時間が経過したが、今の所何も起こらない。
相変わらず紺野先輩達は俺達の事を監視しているようだけど、何か行動を起こそうとはしないみたいだ。
「それでそれで、借り物競争の時に茅野さんが借りたのがカツラって書いてあって、バーコード禿げのカツラを被って走ったんだよ」
「山岡さん!? そんな恥ずかしい事言わないでよ!?」
「別にいいじゃん。風見が体育祭にいなかったんだから、その時にあった事を話しても」
あれから俺達は3人でドリンクバーの飲み物を飲みながら、体育祭の事を話していた。
どうやら俺がいない間に色々な事があったらしく、それを楽しそうに委員長は話す。
「そんなことよりもリレーの話をしようよ。うちのクラス、リレーも凄かったんだよ」
「何が凄かったの?」
「山岡さんが女子チームのアンカーだったんだけど、ものすごく速かったの」
「へぇ~~~、委員長の足速いなんて意外だな」
てっきり文系タイプで運動は苦手な物かと思っていたけど、そうではなかったらしい。
学業も優秀で運動も出来るなんて、完璧超人じゃないか。
少しだけ委員長を見る目が変わった。
「その時のリレーだって最下位からのごぼう抜きで2位まで上がって、アンカーの男子につなげたんだ」
「そんなことがあったのか。凄いな、委員長」
「結局アンカーの男子が前を抜くことが出来なかったから、結果は2位だったけどね」
「惜しかったな。もう少しで1位だったのか」
「あの時程風見がいてくれればと思ったことはないよ。アンカーに風見がいれば絶対に1番を取れていたわ」
委員長が不満そうに話している所を見ると、どうやら本当にリレーで負けたのが悔しかったみたいだ。
だからこの話題を避けていたのだろう。先程よりも少々不機嫌そうだ。
「そういえば体育祭の間、葉月はどうだったんだ?」
「小谷松君? 小谷松君は‥‥‥あぁ、色々あったわ」
「その口ぶりだと何かあったんだな?」
「うん。お昼休憩の時は凄かったわ。紺野先輩と久遠さんが争うようにして葉月君を取り合っていて。私達の介入する隙が全くなかった」
「なるほどな。その話を聞いただけで、現場が想像つくよ」
大方昼休みになった瞬間に葉月の目の前で2人が喧嘩を始めたのだろう。
委員長の顔を見れば、どれだけ2人の仲裁が大変だったのかがよくわかる。
「その様子を見ると大変だったようだな」
「そうね。でも、私達は傍から見ているだけだったから、話している程大変なことはなかったわよ」
「それならいいんだけど‥‥‥あれ? 委員長が2人を止めたんじゃないの?」
「私は何もしてないわよ。その争いを遠くからそっと眺めてたわ」
「それは賢い選択だな」
でもそうだとすると誰がその争いを止めたんだろう。
それだけが疑問に残った。
「もしかしてその騒動は結衣が止めたの?」
「私も何もしてないよ。グラウンドに戻ってきたら、騒動が終わってたよ」
「そうだったのか」
「うん。私は麻衣ちゃんや料理部の人達とお昼ご飯を食べていたから、気づかなくて後から教えてもらった」
「なるほどな」
茅野が巻き込まれなくてほっとした。
でも、それはそれで先程とは別の疑問が浮かんだ。
「あれ? 結衣は葉月達と昼食を一緒に取らなくてもよかったの?」
「うん。料理部のみんなと食べる約束をしていたから事前に紺野先輩達に断りを入れて、別の場所で食べていたの」
「そうだったのか」
「何か悪いことをしたかな?」
「別に結衣は悪いことをしてない。結衣がそれでいいならいいんだ」
色々と疑問が残るけど、結衣がそれでいいなら問題ないだろう。
変に俺が介入しても事態は好転しないので、彼女の好きなようにさせた方がいい。
その方が変なストレスが溜まらなくていいだろう。
「お待たせしました。こちらが注文の品でございます」
「ありがとうございます。こちらに置いて下さい」
「わかりました」
それから俺達はウエイトレスのお姉さんが持ってきてくれた料理を受け取る。
全ての料理を運び終えると、お姉さんはまたどこかへ行ってしまった。
「とりあえず料理が揃ったから食べましょう」
「うん。いただきます」
「「いただきます」」
それから俺達は運ばれてきた料理をゆっくりと食べ始めた。
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