第180話 予定外の来客
「ここがみんながいるファミレスか」
「普通の所と違って、ちょっと内装がおしゃれかも」
「確かにそうだな。綺麗な作りの建物だと思ったけど、内装も綺麗だ」
俺達が入ったファミレスの店内は隅々まで見るが埃一つ落ちていない。
昼夜営業しているファミレスでここまで綺麗なのは中々見ないので、きっと店員が徹底して掃除しているからこんなに綺麗になっているのだろう。
「そりゃそうでしょ。このお店は最近新装開店したお店なんだから、綺麗なのは当たり前でしょ」
「なるほどな。だからこんな綺麗だったのか」
そういう理由ならお店がこんな綺麗なのも納得だ。
昼時なので店内にもそれなりにお客さんが入っておりにぎわっている。
「お待たせいたしました。何名様ですか」
「今日予約していた山岡といいます」
「失礼しました。山岡様ですね。それではお席にご案内します」
店員さんはそう言うと、俺達を席へと案内してくれる。
どうやら俺達の席は他のお客さんに迷惑が掛からない奥の席らしい。
「こちらが山岡様達のお席になります」
「この一帯が私達の席ですか?」
「はい。団体様ようの席だと大人数が座れませんので、席も分割させてもらっています」
「わかりました。ありがとうございます」
「メニュー表はどうしますか?」
「大丈夫です。他の席のものを借りますので」
「わかりました。メニューが決まりましたら、お席の横にある呼び鈴を鳴らしてください」
「ありがとうございます」
それだけ言い残すと、店員さんは厨房の方へと行ってしまった。
残った俺達はその場にぼさっと立ち尽くしていた。
「風見、ぼさっとしてないで席に座るわよ」
「わっ、わかってるよ」
「席はそうね‥‥‥あそこが空いてるから、そこに座りましょう」
委員長に案内された席は誰もいない4人掛けの席だ。
他の席には人がいるのに、その席だけは何故か空いていた。
「茅野さんはそっち座っていいわよ」
「結衣、委員長の隣じゃなくていいのか?」
「うん。私はここがいい」
「そうか。結衣がそう言うなら俺は構わないけど」
「良かったわね、風見。茅野さんと隣になれて」
「絶対委員長はからかってるだろう」
「別にからかってないわよ。素直な感想を言っただけ」
「ぐっ!?」
委員長のやつ、こんな時だけ嬉しそうな顔をして。
まるで俺達の事を応援しているようだ。
「早くメニュー表を見ましょう。私お腹空いちゃった」
「そうだな。俺も朝食を殆ど取らなかったから、お腹が減った」
それから俺達は席に置いてあったメニュー表を手に取り、何を食べるか話し合う。
だが3人でメニュー表を見るが、中々食べたいメニューが決まらない。
どれもこれも美味しそうなので、1つに絞ることが出来ずにいた。
「う~~ん、何にしよう」
「これだけメニューが多いと悩むよね」
結衣と委員長は楽しそうにメニュー表を眺めている。
2人がメニューをめくってる中、俺はある事に気づいた。
「なぁ、委員長」
「どうしたの風見? そんな辺りを見回して」
「他の席は7人か8人で座っているのに、何で俺達の席だけ3人で座ってるんだ?」
他のクラスメイト達が7、8人の集団で座る中、俺達3人だけは別の席なのである。
あの葉月でさえ8人掛けの席に座って楽しそうに談笑しているのに、俺達だけは4人掛けの席に座っている。
「(心なしか葉月の席だけは女性比率が高い気がする)」
普段の行いは最悪だが、あいつは顔だけはいい。
だから普段紺野先輩達のせいで近づけないクラスの女子達ここがチャンスと言わんばかりの勢いで、葉月にアピールしているように見えた。
「しょうがないでしょう。団体席で座れるところがなかったんだから」
「確かにそれならしょうがないな」
「何? 私と茅野さんだけじゃ不満?」
「不満じゃない‥‥‥むしろそっちの方が助かってる」
「どういう事?」
「いや、こっちの話だ。忘れてくれ」
せっかく葉月と席が離れられたのだから、今日はこの時間を満喫しよう。
隣に結衣もいるんだし、この紙から与えられた幸運を今日は享受することにする。
「決めた!! 私はこのヒレカツ御膳にする!!」
「私はこの茄子とトマトのアラビアータにします」
「そしたら俺はこの鶏と野菜の黒酢あんかけにしよう」
「よし!! 決まったなら頼みましょう。呼び出しボタンは‥‥‥ここにあるわね」
委員長が呼び出しボタンを押して先程俺達が案内してくれた店員さんがやってくる。
それからメニューを注文して、全員でドリンクバーを頼んだ。
「ここのドリンクバーは備え付けだから、取りに行きましょう」
「そうだな。せっかくだからみんなで取りに行くか」
「うん」
それから俺達は立ち上がり、ドリンクバーの方へと行く。
結衣と委員長が楽しそうに話す中、ひときわ華やかな席が目に入った。
「あの人達、どこかで見たことがあるな」
よく見ると座っている3人共俺達と同じ学校の制服を着ている。
その3人が俺達の方の席の方をじーーっと見ていた。
「あれってもしかして‥‥‥紺野先輩!?」
何度も目をこすって見たけど間違いない。あの席には紺野先輩がいる。
それだけじゃない。久遠や星乃も一緒になって俺達のクラスの席を見ている。
「なんであそこに紺野先輩達がいるんだ!? 今日のお疲れ様会って、俺達のクラスの人達しか場所を知らないはずだろう!?」
それなのに何故か紺野先輩達はこの場所を突き止め、こうして俺達を監視している。
いや、俺達を監視しているのではないだろう。彼女達の目的はあくまで葉月。その葉月がクラスの女子達とイチャイチャしているのを監視しているようだ。
「どうしたの? 俊介君? ドリンクバーに行かないの?」
「あぁ。今行く」
あの席に紺野先輩達がいたことは結衣達に言わないことにしよう。
首を突っ込むとまた面倒事に巻き込まれる。そんな事に巻き込まれるぐらいなら、知らないふりをした方がいい。
「そうだ、俺は何も見ていない。今日は結衣や委員長と楽しい一時を過ごすんだ」
「俊介君? どうしたの?」
「風見、独り言なんていって。気持ち悪いわよ」
「悪かったな。今度から気をつけるよ」
いかんいかん、つい心の声が漏れてしまった。
でもそうなるのもしょうがないだろう。だって見てはいけないものを見てしまったのだから、この反応をしてしまっても仕方がない。
「茅野さんは何にする? このファミレスって色々な種類の紅茶もおいてあるのよね」
「すごい!! 俊介君はどれがいいと思う?」
「そうだな‥‥‥せっかくだから、俺はこのアップルティーにしよう」
こうして俺は今見た物を脳内で消去し、結衣や委員長と一緒にドリンクバーでドリンクを選ぶ。
ドリンクバーで飲み物を選びながら、何も起こらないことを祈り席へと戻った。
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