第179話 付き合えるなら誰?
帰りのホームルームも終わり、俺は今結衣と委員長と一緒に自転車で帰っている。
帰っていると言っても家に帰っているわけではない。お疲れ様会が開かれるというファミレスへと向かっていた。
「委員長」
「何?」
「さっき言っていたお疲れ様会をする為のファミレスってこんなに遠いの? もう2つ分ぐらいの駅を自転車で走ってると思うんだけど?」
「しょうがないでしょ。うちのクラスは電車で学校に来ている人達もいるから、間を取ってこの隣の駅にあるファミレスでやろうって決まったのよ」
「隣の駅って、まだ自転車を漕ぐの!?」
「そうよ。風見もいい練習になるでしょう」
「まぁな」
いい練習になると言われても、今日は練習をするなって顧問の先生から言われてるんだけどな。
いつもの練習よりはかなり楽な部類に入るけど、完全休養日にこの距離を自転車っで走ったと顧問に伝えたらいい顔はされないだろうな。
「(それよりも俺が気になっているのは結衣の事だな)」
運動が苦手な結衣がこの距離を耐えられるかが不安だ。
今まで俺と一緒に走った時も息を切らしていたし、そんな結衣が疲れてないか不安だった。
「結衣、大丈夫か?」
「うん。今の所大丈夫」
「もし辛くなったら遠慮なく言ってくれ。委員長にも言って、途中休憩を取ろう」
「わかった」
今の所結衣の顔色は悪くなさそうだ。多少汗もかいているようだが、まだまだ余裕があるように見える。
「こんな事なら、最寄り駅から電車に乗ってくればよかった」
「何言ってるのよ。これも節約の一環でしょ」
「節約節約言ってるけど、必要経費って言葉もあるだろう。電車を使うのは必要経費だったと思うぞ」
これが俺と委員長だけなら問題なかったけど、ここには結衣もいる。
運動が苦手な結衣がいる以上、電車で行った方がよかっただろう。
「もしかして風見はもう疲れたの?」
「まさか。俺は全然大丈夫だよ」
「ということは、貴方は茅野さんの事を気にしてるのね」
「まぁな」
「ふ~~~ん。風見って意外と優しいのね」
「意外とは余計だけどな」
結衣があんまり運動が得意でないことは俺が1番よく知っている。
だから俺は委員長にもこんなことを言ったのだろう。昔の結衣の事をあまり知らない俺だったら、こういう事を言ってないかもしれない。
「俊介君、私はまだ大丈夫だよ」
「わかった。辛くなったらいつでも言ってくれ。少し休むから」
「うん」
結衣にこんなことを言ったけど、本当に疲れてそうだったら休むつもりだ。
今は結衣にまだ余裕があるから自転車を漕いでるけど、少しでも大変そうだったら無理やりどこかに寄って休むつもりだった。
「ねぇ風見」
「何だよ」
「本当に貴方と茅野さんって付き合ってないのよね?」
「だから付き合ってないって何度も言ってるだろう」
これで委員長にこの事を伝えるのは2回目だ。
一体彼女は俺達に何を期待しているのだろう。
「じゃあ質問を変えるけど、茅野さんと付き合えるなら付き合いたい?」
「ぶっ!?」
「汚いわね。急に噴出さないでよ」
「悪い。あまりに衝撃的な質問過ぎて驚いた」
委員長め、結衣を目の前にして何を言ってるんだよ。
ここで『はい。付き合いたいです」なんて言ったら、告白しているようなものだろう。
質問するなら、せめて結衣のいない所でしてほしい。
「それでどうなの? 風見は茅野さんと付き合いたいの?」
「その質問、出来れば別の機会にしてくれないか?」
「何でよ? そんなに秘密にしないといけない事なの?」
「秘密にしないといけないも何も、本人がそこにいるだろう」
「大丈夫よ。聞かれてたとしても、問題ないと思うわ」
「問題しかないよ!!」
委員長は何を思って問題ないと思ったのだろう。
付き合いたいと思ってる結衣本人もここにいるんだから、問題しかない。
「ふ~~~ん、風見はそんなに言いたくないんだ」
「まぁな。せめてこういう話は結衣のいない所でさせてくれ」
「わかった。それならまた今度話しましょう」
「助かる」
口ではそう言ってるけど、本当に委員長はわかってるのだろうか。
何か独り言のように呟いてるし、少し不気味だ。
「う~~~ん。これは攻め方を変えた方がいいかもしれないわね」
「攻め方を変えるってどういうことだ?」
「何でもないわよ。こっちの話だから気にしないで」
「そう言われると気になるんだけど?」
「大丈夫よ。別に貴方達にとって悪い話じゃないと思うから」
「そうか。ならいいや」
委員長の話は気になるけど、あまり深くは詮索しないでおこう。
今までこういう話に深入りしていい事なんてなかった。特に葉月が関連している話なら尚更だ。
「山岡さん」
「あっ!? あそこの交差点を曲がったらファミレスが見れるから、茅野さんももう少し頑張って」
「うん」
「結衣、体調は大丈夫?」
「私は大丈夫だよ。ありがとう、俊介君」
「くれぐれも無理はするなよ。帰りも大変だと思うから、ゆっくり帰ろう」
「うん!」
結衣が元気そうにしているのを見てほっとする。
前に俺とランニングしていた時のような状態になったらどうしようかと思っていたけど、それも杞憂に終わったみたいだ。
「着いたわよ。駐輪場に自転車を止めて中に入りましょう」
「わかった」
それから俺達は自転車を止めて、クラスメイト達がいるファミレスへと入った。
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