第174話 不安だらけの地区大会

 結衣達と一緒に帰ってから2週間が経った日曜日。

 今日は陸上の秋季地区大会当日。俺は試合前のアップを1人でしていた。



「この陸上競技場はサブトラックがないんだよな」



 地区大会は最寄りの地区の中で使える競技場を使っているので、あまり大きい所は使用しない。

 なのでサブトラックがあるような大きな競技場は俺達の地区にはないので、競技場の周りをグルグルと走って体を温めていた。



「ふぅ、これぐらいでいいか」



 程よい汗をかき、十分に体が温まった所で走るのをやめた。

 ちょうどいいぐらいにあったまっており、体はほぐれている。



「これぐらい走れば十分だろう」



 走りすぎると本番で体力を使い果たしてしまう。

 体も十分ほぐれたし、これぐらい走れば問題ないだろう。



「アップは終わったか?」


「ちょうど今終わった所だ」



 俺と同じレースを出る慶治もアップは終わったみたいだ。

 少し息を切らせている所を見ると、かなり速いペースで走っていたらしい。



「慶治は今日どのぐらいのペースで走るつもり?」


「そうだな‥‥‥大体km3分ペースで押して行って、ラスト2kmでペースをあげて気持ちよく走り切るイメージだ」


「慶治も俺と同じ考えだったのか」


「そうだな。県大会まではタイム上位者15人が通過できるから、15分を切るペースで走れば突破は出来るだろう」


「その通りだな。だけど油断は禁物だぞ。1発勝負なんだから」



 もしこの1発勝負で負けてしまったら、県大会にすらいけなくなる。

 だから慎重に行かないといけない。間違っても落ちるわけにはいかない。



「でも、俊介だって今日の試合はある意味練習のつもりで挑むんだろう」


「まぁ、そうだな。出来ればピークを県大会の決勝に持って行きたいから、この大会前もしっかり練習してきた」



 今回の地区大会に臨むにあたって、普段の練習と同じような長い距離を走ったり速いペースを使った練習をしていた。

 だから今日も正直体が重い。昨日の1500mのレースもギリギリ勝負には勝った。



「本当に大丈夫か? 俊介は5000mを走った経験がそんなにないだろう」


「まぁな。今まで1500mを主戦場でやって来たから、しょうがないよ」


「くれぐれも無理して先頭に立とうとするなよ。今日は俺の後ろにピタリとついてこい。俺がペースメーカーになる」


「わかった。助かるよ」



 正直慶治がそう言ってくれるのはありがたい。

 あまり長い距離を走ったことがないので、少しだけ不安があった。



「そろそろ試合だな」


「準備をして、早く受付をしよう」



 それから俺達は試合用のユニフォームに着替え、レースの受付をする。

 待機場所で前のレースが終わるのを待って、俺と慶治はスタートラインに立った。



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