第173話 秘密の約束
学校からの帰り道、俺は結衣と2人で帰っている。
何故2人で帰っているかというと、先程委員長と3人で帰っている時にそう言う事になったからだ。
『茅野さん達はこっちの道なんだ。私はこっちだから、もうお別れだね』
『うん』
『おい!? そんな早く別れるのかよ!?』
『風見!! ちゃんと茅野さんを家まで送ってあげなさい!!』
『えっ!? 俺が結衣を送らないといけないの!?』
『そうよ。夜道に女の子1人は危険なんだから、ちゃんと送りなさいよ』
『わかったよ』
『ちゃんと家まで送れたか、明日茅野さんにも聞くからね』
『そこまでする!?』
以上のような会話があり、俺が茅野と一緒に帰ることが決定した。
ちなみに葉月はどうしていたかといえば自分も一緒に帰ると主張した。
だがそんな葉月を委員長が説得し、たまたま廊下にいた久遠に預け帰らせていた。
「こうして一緒に帰るのって、久しぶりだよね」
「そうかもしれないな」
「夏休みの時も、こうやってショッピングモールから一緒に帰ったよね」
「あの時は途中まで茉莉もいたがな」
「ふふっ、そうだね」
あの頃が懐かしい。こうして考えると、まだ1ヶ月ぐらいしか経っていないんだよな。
「そういえば俊介君が走るレースっていつあるの?」
「9月の3週目だから、来週だな」
「来週って体育祭があったよね?」
「あぁ。だから体育祭も俺は出れないんだ」
これも元からわかっていたことだ。
だから俺は高校生活の2大イベント、体育祭と文化祭を欠席することになる。
「なんだか少し寂しいね」
「そうか? 委員長にその事は事前に伝えてあるし、体育祭の種目決めについても問題なかっただろう」
「うん」
「だから気にしないで、結衣は体育祭を楽しんでくれ」
心なしか結衣の反応が悪い。それは彼女が落ち込んでいるようにも見えた。
「俊介君は辛くないの?」
「何が?」
「体育祭や文化祭に出れなくて。辛いと思ったことはない?」
「まぁ、ないわけではないな。みんなが共通の話題を話している中で、その輪に入れないのは寂しいから」
きっと教室に入った時の孤独感はそういう物だったのだろう。
みんなが一生懸命一つの事に向かっている中、俺だけはその輪に参加できない。
それが辛かったのだろうなと思った。
「それなら大会よりも、文化祭を取ればいいんじゃない? その方が俊介君も楽しめるはずだよ」
「悪い。結衣の心遣いはありがたいけど、それは出来ないな」
「何で?」
「司の奴が県大会で待っているからだよ」
「司君が?」
「そうだよ。あいつは合宿で『次は秋の大会で会おう』って言ってたんだ。だから俺もそれに応えないといけない」
それが俺と司の男の約束だから。それにこたえなくてはいけないだろう。
あいつは間違いなく秋の大会に出てくる。そこで夏合宿の決着をつけに来るはずだ。
「俊介君は文化祭よりも司君と戦う事を選んだんだ」
「まぁな」
「ふ~~~ん」
「何か不満か?」
「別に」
その割にはやけに不満そうな顔を結衣はしている。
俺、何か結衣の機嫌を損ねるような事をしたか?
「俊介君、1つだけ私と約束して」
「わかった。その約束ってなんだ?」
「文化祭を休んで大会に出るんだから、絶対に司君に勝ってね」
「わかった。約束するよ」
結衣と約束したのだから、絶対に守らないといけない。
俺は気持ちを新たに大会への準備を始めた。
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