第175話 黄昏の姫

結衣視点の話になります

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 体育祭の昼休憩中、私はスマホを見ていた。

 私は別にゲームをしていたり何か調べ物をしているわけではない。

 スマホのホーム画面を見ながら、ある人からの連絡を待っていた。



「茉莉ちゃんから連絡、まだこないな」



 今日の俊介君達が出る陸上部の秋季大会に茉莉ちゃんが行っていると昨日連絡をもらった。

 その時試合が終わったら結果を送ってくれる約束をしたけど、彼女からまだ連絡はない。



「結衣先輩、そんなスマホばかり見てどうしたんですか?」


「なっ、何でもないよ!?」


「風見先輩の試合結果を待っているなら、まだわからないはずですよ」


「うん。でもレース開始は13時からのはずだから、もう始まってるはずだよ」



 今の時間は13時1分。レースは既に始まってるはずだ。

 だから茉莉ちゃんから結果が送られてきてもおかしくない。



「試合が始まっていても、1分で5kmなんて距離を走れるはずないですよ」


「それはわかってるけど、速報が送られてきてもおかしくないと思うんだけど‥‥‥まだ連絡がない」


「もしかして誰か現地で試合を見ているんですか?」


「うん。茉莉ちゃんが現地で試合を見てるんだって」


「さすが結衣先輩の後輩ですね。あたしも頑張らないと」


「麻衣ちゃんは何を頑張るの?」


「もちろんあたしも結衣先輩のお役に立てるように全身全霊で頑張ります!」


「もう麻衣ちゃんは充分頑張ってると思うんだけど‥‥‥」



 文化祭の料理部の出店にしたって、麻衣ちゃんはものすごく頑張ってくれている。

 それこそ私がクラスの演劇に時間を割かなくてはいけなくなり、その穴を彼女は十二分に埋めてくれていた。



「そうなると風見先輩は水島先輩と対決するんですよね?」


「それはないよ」


「えっ!? 何でですか!?」


「俊介君と水島君の地区は違うから、県大会じゃないと当たらないんだって」


「それなら何で茉莉ちゃんは風見先輩の試合を見ているんですか!? あの人って陸上部のマネージャーですよね!?」


「う~~~ん、それはよくわからないけど。偵察とかじゃないかな? それか試合が別日だったとか」



 その辺りの事は私もよくわからない。

 ただ茉莉ちゃんが現地で試合を見ている事しか聞いてないからである。



「あっ!? 茉莉ちゃんから連絡がきてる!?」


「なんて書いてあったんですか?」


「ちょっと待っててね」



 私は慌ててメッセージアプリを開くと、そこには1枚の写真が貼ってあった。

 そして次の一文にはこんな事が書かれていた。



 茉莉:スタート直後、俊介先輩が転びました。現在最後尾で走ってます



「えぇーーーーー!?」



 みんながいるのにも関わらず、私は驚きの声をあげてしまった。


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