第164話 結衣の反応

 文化祭の演目決めと体育祭の種目決めが終わり、長かったショートホームルームがやっと終わった。



「これでようやく部活に行ける」



 文化祭も体育祭も俺には関係ないとはいえ、クラスの一員である以上途中退席が出来ない。

 そのためクラスのみんなが真剣に話し合っている中、少し冷めた目で話を聞いていた。



「俊介君」


「結衣、どうしたんだ?」



 普段学校であまり声をかけてこない結衣が俺に声をかけてきて驚いた。

 彼女の不安そうな表情を見ていると、俺まで不安になってくる。



「俊介君って本当に文化祭に出れないの?」


「うん。陸上の秋季大会ともろ被りだから出れないんだよ」


「その陸上の大会って、水島君達も出るんだよね?」


「たぶんな。合宿で話していた感じからして、間違いなく出場するだろう」



  合宿最終日に司が俺に対して宣戦布告をしたことを考えれば、間違いなく司達は県大会に出場してくるだろう。

 11月に行われる駅伝大会の調整をする為に出場しない可能性もあるが、あの口ぶりからして間違いなく出場してくるに違いない。



「私も俊介君が走ってる所見たかったな」


「そう言ってくれるのは嬉しいけど、結衣は文化祭に集中してくれ」


「わかった」



 彼女の話を聞いていると、俺と一緒に大会に行きたいと言っているようである。

 もしかすると結衣は俺と司の戦いを見たかったのかもしれない。



「だけど今度の文化祭、俊介君と一緒に周りたかったな」


「悪いな。当日は参加出来なくて」


「しょうがないよ。大事な部活の大会なんだから。俊介君にはそっちを頑張って欲しい」


「そう言っている割にはものすごい不満そうな表情をしてるけどな」



 たぶん結衣は俺達みんなと一緒に過ごす文化祭を楽しみにしていたのだろう。

 だからこんなに不貞腐れているに違いない。



「だって俊介君、文化祭に参加できないって話を私にしてくれなかった」


「事前に言わなかったのは本当に悪かったって思ってる。だけど遊んでいる最中にこんな話をしたら、結衣もテンションが下がるだろう」



 だから俺は今まで結衣にその話をしなかった。

 遊んでいる最中にその話をしたら、間違いなく雰囲気が悪くなると思ったのでここまで言い出せずにいた。



「大会では俺も司に勝ってくるから、結衣は葉月達と一緒に楽しんでくれ」


「‥‥‥わかった。麻衣ちゃん達と一緒に文化祭を頑張る」


「その意気だ」



 今の俺と結衣の会話だけど、ちょっとだけ話がかみ合っていないような気がした。

 どの辺りがかみ合わなかったのかまではわからないけど、少しだけ違和感を感じた。



「俊介君はこの後も練習をするの?」


「そうだよ。結衣はこのまま帰るんだろう?」


「私も帰らないよ」


「帰らない? もしかして結衣も部活があるの?」


「うん。文化祭の準備をしないといけないから、これから調理室で料理部の打ち合わせがあるんだ」


「そうか。結衣も大変なんだな」


「うん。でも何をするかは夏休み前に決めたから、俊介君が思っている程大変ではないかもしれない」


「そういえば結衣は夏休み前に先生に文化祭の事について、話を聞きに行ってたな」



 あの時はこんなに早く準備をするのかと思っていたけど、あれぐらいに準備をする方が丁度よかったのだろう。

 むしろ俺達のクラスの出し物を決めるのが遅すぎだと思った。



「もし帰る時間が合うなら、今日は一緒に帰らない?」


「いいよ。そしたら練習が終わったら、連絡を入れるよ」


「本当!?」


「本当だよ。一緒に帰るのを楽しみにしてる」



 今日の練習は早めに始めるので、そんなに遅くはならないだろう。

 結衣の部活も打ち合わせを行うだけなので、帰る時間が同じぐらいになるに違いない。



「私も終わったら連絡するね」


「わかった。俺はそろそろ部活に行くよ」


「それなら私も部活に行くから、途中まで一緒に行こう」


「いいよ」



 それから俺と結衣は2人で教室を出る。

 途中結衣を調理室へと送り届け、俺は練習の準備をする為に部室へと向かった。



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