第157話 プレゼント選び

 俺の服を買った後も結衣との買い物は続いている。

 先程買った服を中心に別の店へと行き、結衣が俺に合う洋服を色々と選んでくれた。



「ふぅ、結構買ったな」


「うん。でも、どれも安くてよかったでしょ」


「確かにな」



 結衣が行く店はどこもリーズナブルな上、生地もしっかりしているお店が多かった。

 どのお店も俺の財布に優しく、ファッション初心者の俺でもわかるぐらい良いものが買えたと思う。



「結衣はいつもこういう店で買い物をしてたのか」


「うん! このまえ茉莉ちゃんと洋服を買いにきた時もさっきいったお店に行ったんだ」



 どうやら今行ったお店は結衣の行きつけのお店らしい。

 だからこんなスムーズに洋服を選ぶことが出来たのか。



「そういえば結衣は自分の買い物はしなくていいの? 俺ばっかり選んでもらってるのは悪いから一緒に見よう」


「いいの!? 私の物を選んでもらっても!?」


「もちろんだ。せっかく一緒に来たんだから、結衣の服も見よう」


「うん。ありがとう」



 それから俺達は結衣の服を選ぶために店を周る。

 そこで結衣が反応を示したお店があった。



「もしかして結衣はこの店に行きたいの?」


「うん。せっかくだから、中を見てもいい?」


「いいよ。結衣の服を選んでるんだから、遠慮せずに中に入ろう」



 何故こんなに結衣が俺に遠慮をしていたのかわからなかった。

 だけどその理由は店の中に入って理解した。そして外で待ってればよかったとちょっと後悔した。



「(結衣が服をみたい店って、女性服専門店なのか)」



 お店の中には男性用の服がなく、全て女性物の服だった。

 トップスやパンツだけならまだいいけど、スカートや女性物の下着等男が見てはいけないようなものまで置いてある。



「(しかも店の中は全員女性しかいないし、なんだか気まずいな)」



 男性がいたとしても、それは一緒にいる女性の彼氏だろう。

 2人で楽しそうに選んでいるので、俺の考えはあながち間違いない。

 結衣の彼氏でもない俺が本当にいてもいいのか。一瞬悩んでしまった。



「どうしたの、俊介君?」


「何でもないよ。それよりも服を探そうか」


「うん!」



 さっきは結衣が俺の服を真剣に選んでくれたんだ。出来れば俺も結衣の力になりたい。

 だからこんな所で恥ずかしがってはいけないと思い、服を見ながら真剣に悩む結衣の事を見ていた。



「俊介君はこのチェック柄のフレアスカートとこっちのデニムのパンツ、どっちが似合ってるかな?」


「俺としてはチェック柄のスカートの方が、女の子らしくて結衣には似合ってると思うよ」


「わかった。そしたらこっちを買う。上はどれがいいだろう」


「そのチェックのスカートなら、このベージュのニットのやつはどうだ? その上に何か羽織れば暖かいだろう」


「うん。そしたらこの茶色のカーディガンも一緒に買う」



 このように結衣の買い物はテキパキと進んでいく。

 先程うじうじと悩んでいた俺とは大違いだ。



「結衣、いいのかよ?」


「何が?」


「今結衣が買ってるものって、俺が選んだものだろう。自分の好きな物を買わなくていいのか?」


「ちゃんと自分の好きな物は買ってるから大丈夫。俊介君に選んでいる物だって、どっちにしようか悩んでいるものだから問題ないよ」


「ならいい」



 結衣自身がちゃんと納得して買った物なら、俺が何かいう事はない。

 彼女はどんどん自分が買いたい洋服を探して、籠に入れていく。



「(せっかくだから、結衣に何かプレゼント出来ないかな)」



 2年生になってからという物の、結衣に助けられるような事が続いていた。

 直近では合宿中も結衣のお世話になったし、何か結衣に贈り物をしたい。



「あっ!?」


「どうしたの、俊介君?」


「ちょっと1人で洋服を見てて。俺も見たい物がある」



 結衣に一言断りを入れて、俺は1人でアクセサリーのコーナーへと向かった。



「きっとこの中に結衣に似合うアクセサリーがあるはずだけど‥‥‥何がいいだろう」



 アクセサリーなんて生まれてこのかたつけたことがないから全くわからない。

 どれも結衣に似合いそうだけど、何を選べばいいだろう。



「何かお探しですか?」


「えっ!? あっ!? その‥‥‥ちょっとアクセサリーを探しに‥‥‥」


「もしかして先程の女の子にプレゼントするものですか?」


「何でその事を知ってるんですか!?」


「何となくですよ。さっきお客様達の初々しいやり取りを見ていたので、そう思っただけです」


「ははっ。そうなんですか」


「きっとここなら彼女さんも喜ぶ物が見つかると思いますので、一緒に探しましょう」


「いや、あのっ‥‥‥結衣は俺の彼女じゃ‥‥‥」


「まずはブレスレットのコーナーから案内します。こちらへどうぞ」



 店員さんが何か勘違いしているようだけど別にいいか。

 せっかく協力してくれると言ってくれているんだから、結衣のプレゼント探しに協力してもらおう。



「まずはこちらのブレスレットですが、カジュアルな服装にワンポイントとして入れるといいと思います」


「ほうほう」


「ブレスレッドがお気に召さないようなら、こっちにネックレスもあるのでよかったら見てください」



 店員のお姉さんに案内される物のどうもこれってものが見つからない。

 そんな俺に根気強くお姉さんは付き合ってくれている。



「あの」


「何ですか?」


「お姉さんのオススメってないんですか?」


「私のオススメですか。それはないですね」


「ないんですか!?」


「はい。こういう物は男の子が真剣に選んでくれたものをプレゼントしてもらうのが、女の子にとっては嬉しい物なんですよ」


「なるほど」


「なので先程から色々迷っているようですが、お客様が選んだものの方が喜んでもらえると思います。だからがんばって下さい」



 どうやらお姉さんはプレゼント選びを手伝ってくれないらしい。

 むしろ頑張って選んでと応援をされてしまった。



「う~~~ん、すいません。この花の形のネックレスですが‥‥‥」


「お買い上げですが?」


「まだ買うか決めてませんが、このネックレス可愛いですね」


「それならケースから出してみて見ましょうか」


「いいんですか!?」


「はい、大丈夫ですよ。今準備しますね」



 そう言うと白い手袋をつけたお姉さんがケースからネックレスを出してくれた。

 そして俺の近くに持ってきてくれてよく見せてくれる。



「このネックレス、花形ではなくてクローバーみたいですね」


「クローバーみたいでなく、クローバーなんですよ。幸せを運ぶネックレスと言われていて、縁起がいいものなんですよ」


「そうなんですか」



 さっき結衣が選んでいた服にぴったりのネックレスだろう。

 値段もそんなに高くないし、結衣へのプレゼントとしては手ごろな値段だ。



「そしたらこのネックレスをもらえますか?」


「わかりました」



 それからレジまで行って会計を済ませた。

 お姉さんの好意によって綺麗に包装までしてくれた。



「色々と相談にのってくれてありがとうございます」


「いえいえ。頑張って下さいね」



 それからお姉さんと別れ、結衣の事を探す。

 しばらく店内を周っていると彼女が見つかる。彼女は店の端の方で、自分の洋服を選んでいた。



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明けまして、おめでとうございます。

今年も1年面白い作品を届けられるように頑張りますので、応援よろしくお願いします。


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