閑話 風見君と茅野さん 初デート

第155話 茉莉のメッセージ

 夏休み終盤、俺はショッピングモールの前に1人で立っていた。



「そろそろ約束の時間だな」



 こんなくそ暑い中どうして俺がこんな所にいるかというと、今日は結衣が欲しいといっていた秋物の洋服を探す為である。

 茉莉も含めてチャットアプリを使い3人で話し合った結果、この日付が全員空いていたので、この日に集まることにした。



「あっ!? 俊介君!?」


「結衣!! こっちだ」



 俺を見つけると可愛らしい姿の結衣が小走りに走ってくる。

 息を切らせた結衣は茶色の手提げバッグを肩にかけ、息を切らしていた。



「ごめん、遅れちゃった?」


「いや、全然遅れてないぞ。むしろ早いぐらいだ」



 集合予定時間の5分前。結衣は全く遅刻をしていない。

 むしろ15分前からここに立っていた俺が早かっただけだ。



「それならよかった。ギリギリに家を出てきたから、遅刻したと思ってた」


「ギリギリに家を出た? もしかして今日寝坊をしたのか?」


「そっ、そう言うわけじゃないよ!? 俊介君は気にしないで!?」


「わかった」



 寝坊していないとしたら、何で結衣は遅刻しそうになったのだろう。

 ゆっくり朝食でも食べていて時間を忘れていたのか。それぐらいしか俺には考えられない。



「うん?」


「俊介君、どうしたの?」


「今日結衣が来ている服って可愛いな」


「本当?」


「うん。もしかしてこの服って、俺とショッピングモールで会った時に買ったものだったりする?」


「そうだよ。あの時色々な服を買ったから着てみたんだけど、似合ってるかな?」


「似合ってるよ。その服装、すごく結衣に似合ってる」



 白と黒の横縞のトップスに黒のフレアパンツを履いており、見た目はとてもシンプルである。

 単純だが夏らしく、以前の合宿で久遠が着ていたような大人っぽい服装である。



「ありがとう、俊介君」


「あぁ」


「俊介君の洋服も‥‥‥うん! いいね!」


「そんな無理に褒めなくてもいいよ。自分でもダサいのはわかってるから」



 おしゃれな結衣に対抗した俺のコーディネートは白のTシャツにデニムのパンツという、なんともシンプルなコーディネートである。

 正直俺は結衣みたいに服に無頓着な所があるので、夏服といえばこれぐらいしか持っていない。



「(こんなことになるなら、もっとちゃんとした服を買っておくべきだった)」



 そんな事を今更後悔しても遅い。せっかく結衣が遊ぼうと言ってくれたのだから、今日は素直に楽しもう。



「大丈夫だよ、俊介君。今日は私もいるから、一緒に洋服を選ぼう」


「ありがとう。よろしくお願いします」


「うん! 任せて。俊介君に似合っている服をちゃんと一式コーディネートするから」



 服を一式買うと言ってくれたけど、どれぐらいの値段がするのだろう。

 一応親には友達と服を買うと言ったら多めにお金をくれたけど、さすがに上下セットの物を買っても足りるよな?



「それにしても茉莉の奴遅いな。どうしたんだ?」


「どこかで事故にあってなければいいけど‥‥‥あれ? 茉莉ちゃんから連絡が来てる」


「本当か!? なんて書いてあった?」


「ちょっと待ってて‥‥‥えっと、『夏風邪を引いてしまったので、今日はいけなくなりました。申し訳ありません。2人で楽しんできて下さい』って書いてある」


「マジかよ!? タイミング悪いな」



 このタイミングで夏風邪なんて、間が悪いにも程があるだろう。

 そうなると今日は1日結衣と過ごさなくてはいけないって事だ。



「(結衣と2人っきりの状態で、一体何を話せばいいんだよ)」



 もしかすると緊張して何も話せない可能性まである。

 そうならないように気をつけるけど、その事を考えると心臓がバクバクとな鳴っていた。



「あれ? 俺のスマホにも通知が来てる」



 よくよく宛先を確認してみると、それは茉莉からだった。

 どうやら結衣だけじゃなくて、茉莉は俺にもメッセージを送っていたらしい。



「一体なんて書いてあるんだ?」


 茉莉:私が御膳立てをしたんですから、今日は頑張って下さい!!


 茉莉:今日のデートで絶対結衣先輩を落とすんですよ!! これは必達です!!

 

「余計なお世話だわ!!」



 この文面を見て確信した。茉莉の奴、計画的に休みやがったな。

 どうりで茉莉の予定を聞いた際、どの日程でも大丈夫と言っていたわけだ。



「あの適当な返事はこういう理由だったのか」



 だからメッセージで予定を聞いた時返事が適当だったのか。

 最初から行く気がなければ、別に予定なんていつでもいいなんて言うだろう。

 まんまと茉莉のやつにはめられたみたいだ。



「どうしたの? 俊介君?」


「何でもない。茉莉が来ないなら2人で買い物をしようか」


「うん」



 茉莉からすれば俺と結衣の2人で遊びに行って来いと言っているのだと思うけど、そんなのは余計なお世話だ。

 気を使いすぎて逆に空気が読めてないぞ。この雰囲気どうしてくれんだ。



「全く、茉莉にはめられたな」


「茉莉ちゃんがどうしたの?」


「何でもない!? それよりも早く買い物に行こう。俺も色々服が見たい」


「うん! 私も行きたいお店があるから、一緒に見よう」



 それから俺は結衣と共に2人っきりのショッピングモールへと向かう。

 多くの人でにぎわうショッピングモールを2人で探索するのだった。


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