第154話 2人だけの時間

 それから牛舎で子牛にミルクを与え終えた俺達はベンチに座っていた。

 あの後子牛にミルクをあげていると、何故か牛舎の飼育員の人にお礼を言われ、粗品としてこの牧場の牛乳やチーズやヨーグルト、ソフトクリームをもらった。



「このソフトクリーム美味しいな」


「うん。出来たてみたいだから、牛乳の成分が多いのかも」


「なるほどな」



 のんびりとベンチに座りながら、2人でソフトクリームを食べる。

 葉月がここまでいないとここまでのんびり過ごせるのだと改めて思った。



「こんなにお土産をもらってもいいのかな?」


「いいんじゃないかな? あの係員さんも感謝してたし」


「そういえばそうだな」



 俺達が係員さんからこんなにお土産をもらったのにはちゃんとした理由がある。

 それは俺に懐いていたあの子牛が原因だった。



「それにしても、あの子牛が大の人嫌いだとは思わなかったな」


「うん。あんなに俊介君に懐いているのに、普段は人を見ただけで逃げ出すって聞いて私も驚いた」



 さっきの係員の話だと、先程俺にのしかかった子牛はあまり人には近づかないらしい。

 係員さんでもミルクを飲ませるのが大変らしい。

 なので俺がミルクを飲ませてくれたことで、大変な業務がなくなり感謝されてしまった。



「俊介君は動物に好かれているんだね」


「この前葉月達と来た時はどうだったんだ?」


「俊介君といた時みたいに動物はあまり寄ってこなかったよ」


「なるほどな。さっきみたいに牛は触れたの」


「うん。子牛は触れなかったけど、大きい牛は触れたよ‥‥‥葉月君以外は」


「やっぱりそうか」



 これは葉月の体質なのかもしれないけど、葉月あいつはことごとく動物に嫌われている。

 昔野良猫に近寄っていき顔を引っ掻かれている所を見ている俺としては、葉月が牛に犬猿されている姿がありありと浮かんだ。



「なんか俊介君とこうして2人で過ごしているのがすごく不思議な気がする」


「そうか?」


「うん。いつもはもっとたくさんの人が周りにいるから、あまりこういう時間ってないよね」


「それもそうだな」



 確かに俺達が一緒にいる時は、いつも葉月達がいた。

 こうして2人でのんびり過ごせる空間は、もしかしたら貴重なのかもしれない。



「俊介君」


「何だ?」


「楽しいね」


「そうだな」



 俺に笑顔を向けている結衣を見て、俺は出来るだけこの笑顔を守ろうと思う。

 結衣にだけは悲しい思いをさせたくない。この時俺はそう思った。



「うわ~~~!?」


「葉月の驚いている声が聞こえるな」


「いい時間だし、そろそろみんなの所へ戻る?」


「そうだな。戻ろうか」



 それから俺達はロデオマシーンで遊んでいる葉月達の所へと戻る。

 葉月達の所へ戻った俺達が見た光景は、ロデオマシーンに乗った葉月が機械に振り回されて、地面に振り落とされている姿だった。



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ここまでご覧いただきありがとうございます。

これで3章は終了となります。


4章開始は閑話を挟んでからになります。

閑話の内容はこの3章でも触れられていた、俊介と結衣達がお買い物をする話です。

合宿が終わり夏休み最後の思い出話になりますので、楽しみにしていてください。


4章の簡単な内容につきましては、閑話が終了次第改めて告知をさせていただきます。

最後になりますが、よろしければぜひフォローや★★★の評価、応援をよろしくお願いします。


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