第10話 ミステリアスレディー
大人っぽくスタイルもいいそのグラマラスな姿は見る人を引き付ける魅力を持つ。
茅野一筋だった俺ですら初めてあの人に話しかけられた時、思わず息を飲んでしまう程のプロポーションと美貌を持っている。
見た目だけは完璧の超絶美人だけど、俺としてはあまりお近づきにはなりたくない人物であった。
「俊介も知ってるよね? 紺野先輩の事」
「もちろん知ってるよ。ただ俺はあの人とあまり関わりたくはないけどな」
「どうして? 包容力があって優しい先輩じゃない?」
「それはお前だけだろ? あの人は色々と謎な部分が多いから、俺にとっては天敵なんだよ」
「そうなの?」
「お前知らないの? あの人にまつわる噂話」
「僕は知らないよ。どんな話があるの?」
「例えばこれは一例だけど、あの人の親は組の幹部職についているらしい」
「らしいって、そんな根も葉もない話を俊介は信じるの?」
「信じるも何もそれを裏付ける噂があるんだよ」
「それってどんな噂?」
「これは紺野先輩が高校に入学した時の話らしいが、入学直後彼女に付きまとっていた上級生のストーカー男がいたらしいんだ」
「うんうん。それで?」
「あまりのしつこさに紺野先輩も耐え兼ねて父親に相談した結果、その父親が組の構成員に指示を出してそのストーカー男を捕まえたらしいんだ。その後一通り尋問を行い二度と自分に付きまとわないと契約させた上で、簀巻きにしてそいつを海に捨てたらしいぞ」
「そんな事、紺野先輩がするはずないよ!!」
「だからあくまで噂だって。本気にするなよ」
他にも年上の医者と付き合っている話や有名な若手実業家で色々な会社の社長とコネがある話、しまいには裏社会のフロント的役割についている為、裏世界に精通している話等、彼女の周りには様々な噂がついて回る。
そういった真偽不明の噂が出回った結果、ついたあだ名はミステリアスレディー。本人が出回っている噂を肯定も否定もしないのと、彼女の私生活が謎に包まれていることからそのようなあだ名が定着した。
「やっぱり俊介は紺野先輩の事嫌いなの?」
「だから嫌いじゃないって。言葉を変えるなら、ちょっとだけあの人の事が苦手なだけだ」
「何で苦手なの? あの人は優しくていい人じゃない」
「確かに葉月のいう通り、普通に接していればただの優しいお姉さんだ」
「だったらどうして俊介は紺野先輩の事を苦手なんて言うの?」
「紺野先輩だけだったら問題なく対応できる。だけど紺野先輩に付き従う親衛隊に目をつけられると厄介なんだよ」
「親衛隊? 何それ?」
「ファンクラブ見たいなものだよ。この学校には紺野先輩を崇拝するグループがいて、そいつ等に目をつけられるととんでもない目に合うらしいんだ」
「へぇ~~。そんな組織がこの学校にあるんだ」
「そうだよ。この学校の可愛い女子達には、みんな親衛隊がいるって聞くぞ」
それこそあの茅野にも親衛隊を名乗るファンクラブがあるらしい。らしいというのは、俺もファンクラブがあるという事しか知らないからだ。
そもそも親衛隊は影で結成された学校の部活に所属しない非合法組織なので、その実態は俺もよくわかっていない。
どういった手順を踏んで入会し日頃どのような活動をしているか、その全てが謎に包まれている。
「そんな組織があったんだ」
「あぁそうだ。特に紺野先輩の親衛隊は他の所よりも過激な組織で、裏で紺野先輩の身の回りのサポートをしているらしい」
「そうなのね。それで私の何が厄介なの? 風見君」
「基本親衛隊という組織は崇拝している女性のいう事を絶対に聞くんだよ。茅野みたいに親衛隊の存在を知らずに慎ましく生活している人は別として、あの人は上手く親衛隊を使うから手に負えないんだ」
「例えばどんな事をしてるの?」
「噂では自分にしつこく付きまとう男子に対して親衛隊を使って制裁を加えていて、例のストーカー事件も一説では親衛隊の連中が裏で暗躍していた‥‥‥‥‥って、葉月。お前今何か言った?」
「僕は何も言ってないよ」
「それじゃあ誰が‥‥‥」
「あらあら、
「こっ、紺野先輩!?」
耳元で聞こえてきた艶っぽい妖艶な声。慌てて後ろを振り向くと、そこには長い髪をなびかせた紺野先輩がたたずんでいた。
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