第2話 因果応報

 放課後のホームルームが終わると、俺は部活へ行く準備をする。

 そんな俺の所に困った表情をした葉月がやってきた。



「どうしたんだよ、葉月? そんな変な顔なんてして」


「変な顔じゃないよ!! 俊介、酷いじゃないか!!」


「何が酷いんだよ。俺お前に何もしてないけど?」


「さっきの宿題、何で僕が先生にあたる所だけをピンポイントで間違えるんだよ!!」


「そんなのは知らん。悪いが俺は完璧超人じゃないんだ。間違う事だってあるだろ」



 何で葉月はこんな言いがかりを俺にしてくるのか。それはさっきの数学の時間の話だ。

 どうやら先程俺が渡した宿題の回答にどうやら間違いがあったようで、葉月は先生に間違った答えを言ってしまったことが原因である。



「間違えた時に先生からどうしてこの式になったか聞かれた時、しっかり答えていたら問題なかっただろ?」


「それがわかれば苦労しないよ!! 俊介の宿題写したのも簡単にバレちゃったし、何で先生はあんなにすぐわかったの?」


「数学の先生は俺達が1年の時からの付き合いだからな。何も言わなくても全部察してくれたんだろう」



 あの先生は怒ると怖いが、意外と生徒への理解がある先生でもある。

 入学当初は葉月と一緒によく怒られていたけど、月日が経つにつれ俺に同情するようになっていき、結果葉月だけが怒られ何故か俺は見逃されていた。



「宿題を写したのがバレてどうなったんだ?」


「行間休みに散々怒られた挙句、これから生徒指導室で特別実習をすることになったんだよ」


「それはご愁傷様」


「何で僕はこんなに運がないんだろう?」


「運がないんじゃなくて、ただの自業自得だ」



 そもそも自分がちゃんと宿題をすればこんなことにはなってなかったはずだ。

 それを運のせいにするなんて、神様を馬鹿にしている。



「もうこんな不幸体質嫌だよ!! 俊介、交換して!!」


「だぁぁぁ!! 触るな!! そんなことで体質が改善するわけないだろう。いい加減離れろ!!」


「離れないよ!! 僕の不幸な体質を俊介におすそ分けするんだ!!」


「あっ!?」



 抱き着いていた葉月が滑ってこけたせいで、俺まで一緒に躓いてしまう。

 ただ幸いに下に葉月がいたおかげで、全く痛くない。下にいた葉月からはカエルの呻き声のような音が聞こえて来たけど。



「葉月、大丈夫か?」


「大丈夫じゃないよ。痛い」


「そりゃそうだよな。そんなに見事に潰れてればそうなるよな」



 葉月が自称する不幸体質について、一部は認めないといけない。

 今起こった出来事は葉月がいう不幸体質のほんの一部分であり、このように葉月は運が悪い。

 これは今日に限った話ではなく、昔からそうだったみたいだ。



「とりあえず立てよ。立てるか?」


「うん。1人で立てる」


「ならよかった」



 見た所大きな怪我もない。葉月と同じ学校にいた奴の話を聞くと今までこれは絶対に怪我しただろって事が起きても怪我はしなかったので、ある意味運がいいのかもしれない。



「そ・れ・よ・り・も!!」


「まだ何かあるのかよ?」


「さっきの話に戻るけど、何で僕にお咎めがあって俊介にはないの?」


「だから先生も俺の苦労をわかってくれたから見逃してくれたんだよ」



 さっきの授業中、俺が葉月にノートを貸していたことももちろんばれた。

 だが先生は俺の顔を見るとため息をつき、『風見も大変だな』と言っただけで俺には何のお咎めはなかった。



「とりあえず俺はもう部活に行くわ。あとは勝手にやっててくれ」


「ちょっと待ってよ!! 俊介は僕を見捨てて部活を取るの!? この薄情者!!」


「なんとでもいえ。全部お前が悪い」



 俺はすがり付いてくる葉月を振り払い教室を出て、先輩達が待つ部室へと向かうのだった。

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