雨の日

昼1時

外に出ると頬に水滴が当たった。

滑らないように、雪の上を歩く感じで車道を渡る。

バス停に向かい、少しするとバスが来た。

バスが定刻通りに目的地に着くわけもなく、いつもどおり遅れて販売店近くのバス停に到着する。すこし歩いた大通りの路地裏に販売店はある。

色々と指示が書かれているファイルに目を通して、机に積まれた新聞から必要枚だけ取り出す。

それを自転車に詰め込んで販売店をあとにする。


いつも、サンダルで配達しているわけだけど、雨の日はこの底が擦り減ったサンダルだと滑るんだ。かならず、一回はずっこける。

自転車で配達してるんだけど、自転車も二回に一回はずっこける。自転車のずっこけはほんとに勘弁してほしい。

新聞が泥まみれになっちゃうから

なんて考えていたら、後ろで金属物が地面に当たった大きな音がした。宅配業者が台車を降ろす音だったいいのにと、案の定自転車はずっこけ。

新聞は無事だったけど、泥まみれになったら2.5km離れた販売店まで片道15分かけて戻らないといけないんだ。なんで遠くしたんだよってつくづく思うよ。僕が始めた3年前は500mぐらいのところに在ったのに。

こんな日は、インターナショナルを歌うと上向きの気持ちになる。

別に大声で歌うわけじゃないよ。

「いざ闘わん!いざ!奮い立ていざ!」


ちょっと息苦しくなって、マスクを外すと線香や風呂の匂いが鼻の中に入ってくる。雨の中での配達中に風呂の匂いはきつい。

香水の匂いに煙草の匂いも鼻に入ってくる。

古着屋が建ち並ぶエリアだから、こうお洒落な匂いがするのだろう。東京でいう下北沢的なところ。

ホールやエレベーターの独特な匂いもまた癖になる。

ガラスを積んだ軽トラがガタガタと古い路地を進んで行く。奥の工事現場にはたくさんの土を積んだトラックがまた小さい路地と路地の交差点を何度も切り替えて曲がる。

ここにあった駐車場も再開発でガラス張りやコンクリート打ちっぱなしのビルに生き変わる。

氷屋のワンボックスカーが横を通る。

「こういう景色を大切にしたいよね」

配達中、自動販売機が目についたので、自動販売機にお金を入れてでてきたエナジードリンクを一気飲みした。こんなことやってるから、早死するとか言われるんだけど、死なんて怖くない。強がってるわけじゃなくて。

一時期バイトに自転車で行ってたときがあって、その時に駐車場から出てきた車とぶつかったことがあって、その時は死を覚悟したんだけど怖いとかそういう感情は無かった。僕が居なくなった後の某組織の行末の方が心配だった。

冷たいエナジードリンクを一気飲みしたせいか、すごく身体が冷えてしまった。いつも同じことで悩んで、後悔しているような気がする。煙草は温かくならないしな

学ばないな僕


今日の配達も無事に終わり。まあ無事に終わらなかったことは夢の中以外では無いんだけど。

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