2022/02/04

 2日アメリカ国防総省が発表したところによれば、アメリカ軍のノースカロライナ州フォートブラッグ基地から、現在4000人が駐留配備されているポーランドに対してさらに1700人を、そして空輸部隊300人をドイツに派遣し、代わってドイツに駐留する1000人の機甲部隊がルーマニアに再配備させる模様。ルーマニアには現在900人のアメリカ軍が配備されているが、これを強化するものだ。先般8500人規模の兵力にヨーロッパへの派遣準備を命じたという報道があったが、それとはまた別の命令らしい。


 またイタリア半島の右側、クロアチアとの間に挟まれているアドリア海ではアメリカ海軍の空母ハリー・S・トルーマン率いる打撃群が2週間の訓練を行なってきたのだが、このまま帰国せずにNATO(北大西洋条約機構)の指揮下に置き、ヨーロッパに待機させることが決まったらしい。


 どちらの例でも「ウクライナでの戦闘に参加する」とは言っていない。あくまでも周辺のNATO加盟国の護りを固めるという名目である。もちろんプーチン大統領がこれをどう受け取るかは知らない。ただルーマニアとポーランドはウクライナと国境を接する隣国である。アメリカ軍にその気があれば簡単に攻め込めるのは事実だ。


 ウクライナの兵力は14万人くらいではないかと言われている。対するロシアが国境近くに集めているのは10万人程度から18万人程度まで情報にバラつきがあるものの、頭数ではさほどの差はない。ただし、ロシア側は最新鋭のフル装備、しかもまだ国境に集められていない兵士の余力が10万人ほどはいるだろう。総力戦になればウクライナに勝ち目はない。


 ただ、総力戦などしてしまってはロシアの疲弊はとんでもないレベルになる。もし万が一、中国に国境線を押し上げるつもりがあるのなら、易々とこれを招き入れることになってしまうだろう。


 先般プーチン大統領は「アメリカがロシアを戦争に引きずり込もうとしている」と発言したが、これはただの責任転嫁ではない。彼の立場からすれば一面の事実であるのだ。アメリカを始めとするNATOが一歩引いてくれれば、ロシアの振り上げた拳を下ろす場所さえ用意してくれれば、ロシアだって全面戦争などという馬鹿げた行動を取らなくて済むのは事実であろう。


 ロシアが戦争をしたいのはウクライナであって西側ではない。ロシア対ウクライナの戦争に西側が介入しなければ、実際の戦闘はあっという間に終了し、ほとんど被害など出ないはずだ。何故それがわからないのか、とプーチン大統領は思っているに違いない。もちろんそれは自分で撒いた種であり、自業自得なのだが。




 そんな中、ドイツはメディア監督当局が2日、ロシアのプロパガンダを垂れ流しているロシア国営テレビ局RTのドイツ語放送を、国内のテレビ及びインターネットで放送することを禁止すると発表した。これにRTは強く反発し、ロシア外務省も「ロシアで登録されている独メディアに、報復措置を取らざるを得ない」(時事通信)とする声明を発表している。


 ただし、RTはドイツ国内で放送するための免許を持っていない。その気があればもっと早い段階で放送禁止にすることはできた訳だ。今般の情勢に鑑み、ウクライナ問題が影響しているのは事実だろうが、まあ何と言うか、切っても痛くない場所を切り捨てて、「ほら、こんなに仕事してるんですよ!」とのドイツ政府のアピールに利用されているように思えてならない。こんなのでドイツ国民が溜飲を下げるのかどうかは虫けらにはわからないが、何とも姑息な感じがするところ。




 一方、ウクライナでもしもの事態が発生した場合、日本はすでにアメリカに追随してロシアへの制裁を行うことを明らかにしているが、これに対しロシアのガルージン駐日大使は2日、日本外国特派員協会で記者会見し、

「逆効果となり、日ロ関係の前向きな雰囲気の醸成に資さない」

「日ロ関係に対する責任のある対応を心から期待する」(以上時事通信)

 などと述べた模様。


 日ロ関係の前向きな雰囲気とか責任のある対応とかいうのはアレか、北方領土にミサイル基地を建設するヤツとかを言いたい訳だな。うんうん、なるほど。アホか。最初からありもしないモノのために日本が縛られねばならん理由はない。日本と前向きな関係になりたいのであれば本国を説得し、ウクライナ国境から軍を全面的に引き上げれば良い。極めてシンプルな話だと思うのだが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る