2022/01/24
絵が上手くなるにはどうしたらいいか。虫けらは絵がまったくと言っていいほど描けない。だが上手くなる方法は理解できる。毎日描けばいいのだ。「そんな単純な訳ないだろう」という声が聞こえてきそうな気もするが、これは事実である。
たったそれだけ、と思う人もいるだろう。だが、それは毎日絵を描いたことのない人である。毎日絵を描くというのは大変な労力で、たいていの人間は3日も連続して描けば、「今日くらいは描かなくてもいいだろう」と思ってしまうのだ。言い換えれば、3日連続で描こうが10日連続で描こうが、「今日くらいは」と思わないほど絵を描くのが大好きな人でなくては上手くならない。「好きこそものの上手なれ」はシンプルであるが疑いようのないこの世の真理である。
もちろんこれは絵に限ったことではない。文章だって同じだ。毎日書いていれば、ある日劇的に美麗でハイセンスな文章が、とはさすがに行かないものの、少しずつ上手くなって行く。「こういうテーマで書いてみたら」「この表現に拘ってみたら」などなど、毎日いろんなことを考え意識しながら書いて行けば、自分の頭の中にある物事を文章という形で表現するのに苦心しなくても良くなるのだ。
ただし、文章が上手くなることと、良い作品が書けるようになることはまた別の話である。文章がただ上手いだけでは人の心は動かない。ただデッサンが上手で、ただ色使いが綺麗なだけの絵が人の心を動かさないのと同様と言える。人の心を動かすためには技術的なレベルにプラスアルファが必要なのだ。
無論、創作に携わっている者ならば誰でも、このプラスアルファを込めて作品を創っているつもりだろう。しかし、「つもり」だけではそのプラスアルファは浮かび上がってこない。そこにはそれなりの、文章なら単なる文章力とは別の「表現力」が求められる。これが難しい。この表現力というものは、自分の目にはなかなか見えないからだ。
ことわざに「岡目八目」という言葉がある。これは囲碁に由来する言葉で、傍目八目とも言う。要するに、実際に囲碁をしている2人より、それを横から眺めている者の方が八目先まで見えているという意味である。囲碁で戦っている2人は頭を振り絞ってあらゆる展開を予想し、自分の次の手を考えているはずなのに、これといって頭を使わず、ボーッと眺めている者の方が全体がよく見えたりする。
創作でもまったく同じで、頭を必死で振り絞って様々な読者を想定し、いろんな情報や多彩な展開を織り込んで至極の逸品を作り上げたつもりなのに、何の思い入れも気負いもない他人が見ると穴だらけだったりする。この穴を不自然さなしに埋めるだけではなく、できればそこに花を咲かせられれば、読者としても嬉しい。表現力とはそんなものだろう。
これはただ毎日書いているだけでは鍛えられない。書いた物を他人に見せることを繰り返さなければ育たないし、自分の目が他人の目になるくらい読み返さないと成長しない。何とも厄介なことだが、まあ、イロイロな経緯を経てこの世界に首を突っ込んでしまったのだ、とにかく頑張ってみるしかあるまい。
さて話は変わって、先般アメリカのFOXニュースがウクライナの大使館職員の家族に退避命令を出す、と報じていたのだが、アメリカ国務省は23日、この報道通りに大使館職員の家族に対して退避命令を出した。同時に、一部職員の自主退避も認めた模様。さらにロシアとウクライナへの渡航警戒レベルを、4段階のうち最も厳しい「渡航中止」(レベル4)とした。いかにも開戦前夜である。
こんな中、ドイツ海軍の司令官が22日、突然辞任した。今月21日に、インドのニューデリー訪問中、現地の防衛シンクタンクで講演した際、「ロシアがウクライナを侵攻しようとしているなど、ばかげた発想だ」と発言し、物議を醸した責任を取ると述べている。彼は他にも、
「(プーチン氏の)望み通り敬意を表することは簡単で、恐らく彼は尊敬するに値する」(AFP)
「(プーチン大統領が)本当に求めているのは敬意で、それを与えるのは簡単なことだし、おそらくあの人は敬意を払うに値する」(BBC)
「そして誰かに敬意を払うのは低コストか、コストがかからない場合さえある。彼が求めている尊敬を実行するのは簡単で、恐らくそれに値するだろう」(ロイター)
と述べている。これにウクライナが強く反発したのは当然であろう。現状ドイツはロシアのウクライナ侵攻の可能性に対し、表面的な批判しかしていない。エストニアがドイツ製の兵器をウクライナに移動させようとした際にはこれを停止させている。これはある意味当たり前の話で、ここでも何度か書いたようにドイツ経済はロシアからパイプラインで送られてくる天然ガスに強く依存している。ロシアを怒らせることはドイツの自滅に繋がるのだ。
もちろんそれでもこの海軍司令官のように、正面切ってロシアを擁護する者は少数派なのだろう。だから辞任に追い込まれたのだとは思うが、普通に考えればロシアから何らかの便宜供与を受けている人々は、ドイツの上の方に少なからず存在すると思われる。なればこその現状ではないか。
と、日本人の立場ならそう考えられる。これが岡目八目である。ドイツ人でもロシア人でも、ましてウクライナ人でもない、当事者ではない立場だから冷静に全体が見えるのだ。しかしこれが当事者の立場になると、同じようなことがあっても途端に全体が見えなくなってしまう。
このロシアとウクライナとドイツの関係を、中国と台湾と日本の関係に置き換えてみよう。するとあら不思議、中国が何らかの便宜供与を日本の政治家やメディアに対して行なっている、などと表立って言うと、批判が巻き起こったりするのだ。中には「差別だ」「このネトウヨのレイシストめ」などと言い出す者まで現われる可能性すらある。
だが冷静に考えると、それはあって当然だし、前提とするべき話だということはウクライナを巡る現状を考えればよくわかるだろう。
イギリスの外務省は22日、ロシアがウクライナ政府のトップにウクライナのイーヴェン・ムラエフ元議員を据えようと検討していると異例の声明を出した。このムラエフ氏とは、かつてウクライナに親ロシア政権があったときにこれを支えた人物だ。つまり傀儡かいらい政権樹立を画策しているという訳である。これもままありがちな話と言える。
振り返って現在の日本の政権は、首相と外相、そして自民党幹事長まで親中派と言われている。果たしていまウクライナが置かれている現状が、台湾の明日ではないと言い切れるだろうか。日本人はドイツ人を笑っていられるだろうか。我々は襟を正さねばならない重要な瞬間に接しているのやも知れない。
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