B面-児童養護施設、もう1つの真実…

B-39

「母さん?また来年もここに…紡と来るからね…?」


「…お、お母さん…!ま、また来ます…!」


 目が腫れぼったい俺たちは…父さんの時と同じように2人で手をぎゅっと握りしめたまま…母さんに別れの挨拶をして…車へと戻って行ったんだ。


 ◇ ◇


 車内に戻り…俺たちは、児童施設施設へ向かって行った…。


 今回ばかりは、少ししみじみとした空気が流れていた…好きな歌手の音楽だけが…車内を彩るものの…言葉が繋がらない……なんで…なのかな…?


「つむっ…!」「…せんぱっ…!」


 2人の言葉がぶつかる…


「…俺…運転してるから、喋ってくれ…///」


 運転している事を武器に…紡に言葉を任せてしまう俺は、とことん最低だと今になって感じるよ…。


「…先輩、ずるいっ…///」


 なんだ、紡も何かしらの武器があれば同じことしてたのかよ…ほんと考えが似てるんだよな。


「…先輩…?」


「…うん…?」


「…僕さ、先輩のこと、これから…なんって呼べばいいの…?///」


 そう…俺らのつっかえていたことは大切な恋人だけれど血の繋がった兄弟である事…


 兄弟だから何かが悪いって訳でもないけれど、今まで通りでいいと言われてもどこか変化を加えないと気持ちが整わない感じもあったんだ。


「…なら…紡?…そろそろ俺の事を…凌空って呼んでくれないか…?///」


「…ぬぁっ!///」


 お兄ちゃんって呼ばれるのは違うんだ、だって紡は弟を超越した俺の愛する人だもの…


 先輩、これはこれで嬉しい…紡に呼ばれる先輩は格別に嬉しい。

 でも、ちょっと変化を付けていきたい…ならばまた1つ、2人で前に進んでみよう…。


「…紡?…ゆっくり進もうって約束したろ…?なら…また1歩…進んでみないか?…俺らにしか録音出来ないカセットテープに…ちゃんと刻んでいこう…?」


「…っ…///…そうだよね…!///」


「…兄弟であっても…俺は紡の事が大好きだ…俺はこれからも、お前を愛している形は変わらない…さぁ、紡…どうする…?」


 『僕には君が必要…君にも僕が必要…』


 そんな歌が車内を駆け巡っていく…。


「…わかったっ…!でもね…?またクセで先輩とか言っちゃうかもしれない…それでも許してくれる…?///」


 そう照れながらも、いつもの上目遣いで俺に気持ちを伝えてくる可愛い紡がいて…


 俺も紡がくれたオレンジベルトの時計が付いた左手で、いつも通り頭をポンポンと撫でてあげて…そうだ…!この感覚なんだよ…っ!!


 俺が好きな紡は、無邪気なくせに…前を向こうと少し背伸びしようとして…可愛くて、優しい紡とやり取り、この空間が俺は大好きなんだ…。


「…ああ、許してあげるさ…でもまぁ、時と場合によるかもだけどな…?///」


「……っ!もうっ…!!…り、凌空…?」


「…う、うんっ?///」


「…大好きだよ?///」


 凌空って呼ばれた瞬間、物凄く…恥ずかしくて…気持ちがキュンとしたのは…絶対、紡にバレていたと思うんだ…。

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