B-40
―その後
紡の育った児童養護施設が俺たちの目の前に姿を現し「…凌空、あそこだよっ!ん〜っ!久しぶりだぁ!みんな、元気にしてるかな?♪」と嬉しそうに話す紡。
早速、駐車場に車を停めて俺たちは、児童養護施設の中へと入っていったんだ。
◇ ◇
「…こんにちわぁ〜っ!」
紡の挨拶に奥から「はーいっ!」と女性の声が聞こえて俺たちに駆け寄ってきてくれた。
「…まぁ!紡!待ってたわよぉ!!」
「大先生!お久しぶり!」
(…この方が…紡の母さんのようだった…大先生…)
大先生は、髪の毛をポニーテールで結って、笑顔は優しさの塊のような方だった。
ただ…大先生が俺に目を向けた時に一瞬見せた、ハッ!とした顔を俺は見逃さなかった…。
「大先生…!」
「…うん?なになに?」
「凌空さんです…!僕の大学の先輩で…僕の大切な人です…!」
「こんにちわ、凌空です」
紡は、大先生に俺をしっかりと紹介してくれたんだ…しかも大切な人って…
「凌空さん、こんにちわ!んんっ?あらっ…紡!大切な人ってことは…??」
「…はぁわっ…!///」
口が滑って言いすぎたー!みたいな顔をして口に手を当てて照れを決め込む紡…お前ってやつは…でもそんなところもほんと、可愛いわ…。
「ふふっ!紡?私は貴方のことならなんでも知ってるはずよ?ここに来た時から…いつでもあなたの味方だもの♪」
「…だ、大先生…!…ぼ、僕の…大切な彼氏ですっ…///」
「あら!ほんと?!…紡もやっと愛する人を見つけられたんだね?凌空さん?これからも紡のことお願いしますね?♪」
大先生が俺らに気持ちを残してくれた瞬間… 遠くから施設の子ども達が紡を見つけ、ドタドタと走って駆け寄ってきたんだ。
「わ〜〜っ!!むぐだ〜っ!!」
「むぐっ!♪抱っこしてぇ〜〜っ!!」
「…う、うぇえええ〜ん!!むぐ…会いたかったぁあ…!」
「わあっ!!みんなっ!元気だったかい??」
「もちろんっ!わ〜!むぐ、むぐ〜!!♪」
と子どもたちとじゃれ合う紡の姿を見て、すごく気持ちが和まされて、俺もいつの間にか微笑んでいたんだ…。
「ねぇねぇ〜っ!!むぐぅ〜!僕、むぐのご飯食べたい!」
「え〜!ずるいぃっ!私も食べたい!!」
紡に抱きついて離れない子なんて「やだっ!僕が1番で食べるの!!!」
「…こらこら!喧嘩しないのー!」と紡がみんなをあやす姿を見た大先生がある提案を持ちかけてきたんだ。
「紡、凌空さん?中に入っていかない?」
「え?!大先生、いいの?!」
「もちろんよ!♪しかもお昼前でこれから用意する予定だったから…もし良ければ、久しぶりにみんなにご飯作ってあげてくれないかしら?」
子どもたちも「やったー!」と元気に喜んでいたけれど、紡が俺に向けた顔は、どこか申し訳なさそうな顔をしていて…2人の時間のこと…気にしてんのかな…?
「凌空…?ちょっとだけいいかな…?」
「ああ、もちろんだよ?時間なら、沢山あるだろ…?///」
「…っ///ありがとう…///」
そう、ニコッと俺に残した瞬間…
「…あわわっ!み、みんな!ゆっ、ゆっくり…!!!」そのまま子どもたちに手を引っ張られてキッチンまで……行っちゃった…。
俺と大先生だけが2人きりになったんだ…。
「…凌空さん…?」
「…はい?」
「ちょっと…お話できるかしら…」
さっき俺に見せた…ハッとした顔…大先生もなにか詰まるものがあったのかもしれない…。
その問いかけに俺は「はい、もちろんです」と答えてあげたんだ…。
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