B-38
紡に弟であることを伝え、俺はどこか解放感に満たされていた…やっと、やっと伝えられたんだ…。
「ぼ、僕が…せ、先輩の…おっ、弟…?」
「ああ、紛れもない事実だ…」
「ぇ、えっ…え、ど、ど…どうしよぅ…」
そういう反応になっても、おかしくないさ…
お互いの一目惚れから始まった恋が今となって…兄弟だった…だなんて…
逆の立場なら…いや、逆の立場でなくても…どう受け入れていいのか、俺も最初は分からなかった…。
でも、紡だったから…愛してる人だからこそ…ちゃんと受け入れたい、ちゃんと伝えなきゃって思えたんだ…。
「紡…?」
「…ぅ、うっ、うん…?」
しどろもどろに返答してくる紡に、俺は気持ちを紡いであげてんだ…。
「…この間の言葉、覚えてるか…?」
''…僕は…どんな形でも…先輩が好きだよ…?''
「俺も、お前が弟と分かった時…嬉しかった反面…どうしたらいいんだ…こんなに愛してるのに…って苦しくなったんだ…」
「それでも紡が俺にくれたこの言葉が…俺の気持ちをずっと支えてくれていた…すぐには、伝える言葉が見つからなくて…いっその事、伝えなくても…なんてことまで考えた…」
「…でもさ、違ったんだよ…もう俺たちは、兄弟であっても、そうでなくても…お互いかけがえのない大切なパートナーになっていて…」
「だから…俺もお前も…父さんと母さんに…ちゃんと挨拶が出来た…」
もう…限界だった…勝手に声が震えて…涙も溢れ出てきて止まらない…
「…だ、だから…お、俺はっ…どんな形でも…お前の事が…」
その時………っ!!!
俺が苦しかった時…どうしようもなく泣きわめいた時…そう…あの頃のように…紡は、俺を優しく抱きしめてくれたんだ…。
紡の温もりが…身体にひしひしと流れ込んでいく…紡の声、そして身体も…震えていた…。
「…先輩…?ぼ、僕、変わらず…大好きだから…ずっと…これからも…どんな形であっても……ずっとずっと…愛してる…!」
「…うっ…ぅう…つむ…ぐっ、い、一緒に、幸せに…なろうな…」
俺は、紡をギュッと抱きしめながら…そして紡も…俺たちは、抱き合いながら子どものように…泣きじゃくったんだ…。
きっと、父さんと母さんが空から俺たちのことを見守ってくれているかのように…川のせせらぎと陽の光が俺たちを包み込んでくれていたんだ…。
◇ ◇
俺らはその後、どれだけ泣いていたかわからない…でも、温もりはしっかりと感じ合って…兄弟であっても、俺らの愛の形に嘘偽りは1つも無かった…。
俺は、そっと紡を身体から離して…
「紡…ずっと支えてくれて、ありがとう…」
「こちらこそ…変わらずそばにいてくれて…ありがとう…」
俺たちは、これからもずっとずっと…そばにいる誓いとして、少し熱めのキスを交わしたんだ…。
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