B-32
女将さんのご好意で俺たちは、紗季ちゃんの案内で客室へと招かれた。
客室に着き、部屋の説明や辺りの説明を丁寧にしてくれる紗季ちゃん。
古風溢れる客室は、とても綺麗な和室で、大きな窓からは緑緑しい景色に太陽の光が綺麗に差し込んでいて、自然が大好きな紡も、俺の顔を見ながら「本当に綺麗だね!」と微笑みかけてくれる程、俺たちの気持ちも一瞬で和まされたんだ。
説明が一通り終わったあと「…えへへ、紡ぅ~♪」とニヤニヤしながら紡に声をかける紗季ちゃん。
紡の腕をツンツンしながら「…ほんと彼氏さん、イケメンだねっ!♪」と紡に嬉しい言葉を残してくれる。
「…えへへっ…///凌空先輩、イケメンだけじゃなくて、すごい優しいんだよっ?///」
「えぇ〜っ!いいないいな〜!!私も優しくてかっこいい彼氏が欲しいなぁ〜っ!!」
俺の話で盛り上がってくれるのは嬉しいんだが…紡、俺は俺で…恥ずかしいよ…。
「そうだ!さっちゃん、さっきはありがとね?」
「ふぇっ?なんの事?」
「女将さんとか他の人がいる前で、気遣ってくれて…」
そうだ、同性愛の全てが受け入れてもらえる訳では無い…まだまだ、同性愛の見えない壁や偏見の眼差しは完璧になくなったわけでもない…。気持ち的に受け入れられない人もいるのが事実なんだ…。
逆を言えば、理解してくれる人にも俺らの事で、今回のように周りに気を遣わせてしまうこともあって、時に重荷になってしまう事もある気がするんだ…。
「ふふっ!気にしないで?私は紡が幸せでいてくれたら、それだけで十分!…みんながみんな、受け入れてくれる世界がいつか…来てくれるといいね!」
「凌空さん?」
「うん?なんだい?」
「紡のこと、これからも幸せにしてあげてくださいね?」
紡の恋を…そして俺たちの恋を応援してくれる紗季ちゃん。
俺らは、周りの環境に恵まれているよな…こんなにも支えになってくれる仲間がいてくれて…人と人とが支え合うって、こういう事なのかもしれないな…。
「…ああ、絶対に幸せにするから、これからも何かあったら紡の支えになってやってくれな?」
「はいっ!任せてくださいね!♪」とニッコリ微笑みながら、俺に返してくれたんだ。
「…あ!そうだ!紡は、最近、施設に顔出した?」
「あ〜っ…大学も部活もあったし、なかなかこっちには戻って来れなかったから行けてないなっ…」
「そっかぁ…大先生、紡に会いたがってたよ〜?在籍してる子も、むぐのご飯食べたい!ってこの前、顔出したら話してたし!」
(…むぐっ?!///)
「な、なぁ、紡? むぐって…」
「あ、なんかねっ?一緒に暮らしてた子達が、『つむぐ』って呼びづらかったみたいで、いつのまにか『むぐ』って呼ばれるようになってたんだよね…!」
(むぐ…?!可愛すぎるだろうよ…!///)
「時間見つけて、今度みんなに会いに行ってあげてね?…んじゃ、この後も2人でごゆっくりお過ごしください♪」と紗季ちゃんは客室を後にしたんだ。
「いい子だな、あの子」
「うん…!施設でもずっと支えてくれた大切な親友なんだ…出会えてよかったな…ねぇ?先輩?」
「うん?どうした?」
「明日ね?お母さんのお墓参りが終わったら…僕と施設に行ってくれないかな…?///ちゃんと大先生にも…先輩を紹介したいんだ…///」
紡が言う大先生とは、施設の施設長さんみたいな方のことらしく、言わば紡のお母さんみたいな人だったようだ。
「紡がいいなら、行ってみようか?」
「えっ、いいの!?///」
「ああ、もちろんだよ?」
「やったっ!ありがとう、先輩…!」
紡はその後、大先生へ嬉しそうにLINEを送っていたんだ。
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