A-31
先輩が軽音部に戻ってからも、僕の気持ちは落ち着かなかった。
(あ、あんなこと…言っちゃった…)
(先輩…いい匂いしたな…)
(はぁ…大好きだ…///)
どこをとっても、何を考えても、いい事しか出てこなくて、なんだか自分でも怖くなるぐらいだった。
(…はぁ、楽しみだな…///)
そんなことを思いながら僕は、浮かれ顔のまま学部で出された課題を食堂で終わらすことにした。
◇ ◇
-軽音部-
「みんな、待たせたな」
深結•灯里「あ、先輩、おかえりなさい!」
「おせぇよー、やっと戻ってきやがた」
「待たせてすまない。よし、新曲の練習をしよう、みんなの笑顔のためにもな!」
深結と灯里がこそこそと
「なんかいいことでもあったのかな?」
「なんかあんなウキウキしてる部長、初めて見るよね!」
なんて2人が話している姿を俺は見逃さなかった。「お前ら早く持ち場で練習しろ」といつもの表情で2人に振舞った。
その後、俺と陽翔はふたりで少し話をしたんだ。
「凌空、ちゃんと話せたんだな…。」
「ああ…陽翔、叱ってくれて、ありがとうな…。」
「やめろやめろ!お前からの礼とか、全身が痒すぎる!」
「ふふっ、お前ってやつは…」
「なぁ凌空…?お前さ、実は紡に一目惚れしたんだろ?」
「…なっ!///」
「やっぱり!ははっ!親友の目は誤魔化せねぇぜっ?♪」
「はぁ…///そういう事にしておけ…///…で?お前は、どうなんだよ?」
「な、なんのことだよ?」
「親友の目は誤魔化せないんだろ?俺だってお前のことは行動や仕草で大体分かる。」
「はぁ、お前には敵わんな…///」
「陽翔、それはこっちのセリフだ……ちゃんと深結を守ってやれよ?」
「ま、まだそんなんじゃねぇんだっ…!///」
「じゃあ、どっちが先に幸せになるか」
「お、お前には、ま…負けねぇよっ!!」
「陽翔先輩ー!私と1回、ギターとベース合わせてもらえませんかぁー!」
「…深結!…おう!やるか!!!」
「ふふっ…陽翔、楽しんでこいよ?俺もボイトレ頑張るからさ!」
俺は、お前が親友で本当に良かったよ…。
陽翔…これからもよろしく頼むな…?
◇ ◇
-夜-
家に帰ってきて、僕はいつも通り家事をこなす。まだ昼の余韻が残っていて僕は時折、胸の高鳴りが強くなっていたんだ。
「凌空先輩…///」
口にまで出てしまうほど、先輩の事が愛おしくて仕方なかったんだと思う…。
正直、告白してしまえば楽になるのかもしれない。両思いかもしれないし…。
でも、なんでだろう…。
1歩踏み出せない、気持ちの整理が着いていない僕がそこには居て、輪をかけるように色々怖かったんだと思う…。
その時、ピコン!とLINEが鳴った。
《紡、お疲れ様。今、家に着いたよ》
《今日もお疲れ様でした。しっかりご飯食べてくださいね?》
《ああ、ありがとう。それと昼もありがとな?紡のご飯が恋しいし、いつ、ご飯食べに行っていいんだ?》
僕の気持ちは、内面すごく嬉しいくせに先輩の存在がどんどん近くになっていくに連れて、逆に怖くなってしまった。
なぜなら先輩を大好きな女子や沢山のファンもいる。その中で僕は、凌空先輩を愛していいのだろうか…しかも、男なのに…と罪悪感を感じることもあったんだ。
《来週末はどうですか?》
《来週末か…うん、予定は何もない。土曜日でもいいか?》
《はい、大丈夫です。先輩食べたいものありますか?》
《卵焼きは、絶対に食べたい。あとは紡の得意料理をお願いしたいな。》
《先輩、本当に卵焼きが好きなんですねっ!》
《悔しいことに食べ損ねてるしな》
《そうでしたねっ!一生懸命作りますね!》
《ああ、すごく楽しみにしているよ》
《はい、任せてください!》
《今日はちょっと疲れたし、風呂入って、ご飯食べたら寝るな?先に言っとく、おやすみ。》
《分かりました。凌空先輩もゆっくり休んでくださいね?おやすみなさい。》
こんなに好きなのに、僕は先輩を愛してもいいんだよね…?周りの目を、どうしてこんなに考えてしまうのだろう…。そうだ、明日みんなに相談してみてもいいのかな…?
僕、1人じゃ一目惚れにして初恋を捌きこなす事なんて出来やしなかったんだ…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます