A-26

 家に入り、今日の余韻に浸る僕。切ない話や辛い過去の話をしたはずなのに、とても幸せな時間だった。


 僕は携帯を取り出し、LINEに目をやると洸と深結のグループラインに大量の通知が来ていたことを今になって気づいた。

 そこには、新しく灯里も追加されていたんだ。


《紡、大丈夫だったかな…?》


《心配だけど、きっとあの2人なら大丈夫よ!》


《紡のことだから、ちゃんと連絡くれると思うから待ってみよう?》


 みんな、自分のことのように僕のことを心配してくれていたんだと、ひしひしと伝わってきた…。そうだ、ちゃんと返してあげないと…僕は3人にLINEを返した。


《今帰ってきたよ、みんなありがとう。ちゃんと先輩と話すことができたよ。明日…卵焼き楽しみにしててね?》


 僕がひと言返すとみんな待ってましたと言わんばかりに、速攻既読をつけてくれて


《おお、おかえり!よかったな!紡!!》


 深結と灯里なんか【可愛く泣いてるスタンプ】を送ってくれて、良かったね!と心から喜んでくれて…3人の温もりのおかげで僕はまた1つ、強くなれたんだよ?


 ありがとう…

 美味しく卵焼き作るからね…


 そう3人に心から感謝をして、僕はキッチンに向かうことにしたんだ。


 キッチンに立ち、卵焼きの他にも明日の弁当と軽めの夜ご飯を用意する僕。


(えっと、何人分だ…??)


 自分も入れて6人分の卵焼きを作る僕。児童養護施設にいた時、みんなへ振る舞って以来、久々に友達へ振る舞うことになる。


 しかも今回は、大好きな人にも振る舞うことになる。僕は台所に飾っておいた先輩がくれた写真を手に取り


(先輩、楽しみにしててね?)


 そう僕は、心で告げながら卵焼きをいつも通り焼き始めたんだ。


 ◇ ◇


(よし…全部焼けたな…)


 焼けた卵焼きを前のように、それぞれみんなが食べられるように容器に入れていたその時


 ピコン!


 携帯の鳴る音が聞こえて僕は、携帯を手に取り画面を見つめると、そこには…


《紡だな?LINE登録した。今日はありがとな。》


 先輩からのLINEに僕は嬉しさのあまりニコニコしながら返信をした。今は先輩に顔を見られていないし、堂々と返事が出来る気がしたんだ。


《紡です。こちらこそ素敵な景色を見せてくれてありがとうございました。》


《今何してたんだ?》


《約束通り、卵焼き焼いて出来上がったところです。》


《そうか、明日楽しみにしてるな?》


《また、お口に合うか分からないですが、楽しみにしていてください。》


《紡の卵焼きがまずい訳ないだろ?》


 僕、今すっごく幸せだ…。


 そんな幸せを僕は噛み締めながら、その後も凌空先輩とやりとりをしながら家のことを済ませて、その日は眠りについたんだ。

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