A-17
―大学に入学してから2週間が経った。
凌空先輩への気持ちは変わらない。むしろ、日に日に好きという感情が増してるんじゃないかな?なんて感じていた。
でも、なかなか旧館と新館だと会う機会や接点がなくて僕はいつも通り、洸と深結と過ごしていた。
洸も少しずつサッカー部が忙しくなってきている。少しずつ日焼けしてきているし、練習がハードなのか、いっつもお腹を空かしている。
深結も軽音部のメンバーとして本格的にベースの練習が始まっているようだ。時折、深結が僕のために、凌空先輩を盗撮しては、LINEに送ってくれていたんだ。どれも僕の宝物だ。
僕も料理部の活動で来月、行われる体育祭のブースで料理を提供することになっている。
そこでスタミナの付く料理を生徒や来校者に振る舞う予定で検討しているところだった。
それぞれ忙しくなることは、いいことだけれど2人に会える時間が減ってしまうのは、少し嫌かも…なんて、僕は心で小さく思っていた。
-お昼
いつも通り、洸と一緒に食堂に向かう僕は、今日も手作りの弁当を持って向かった。
「あんれっ?深結は?」
「ああ、軽音部の友達と打ち合わせがあるから先に行ってて~!ってLINE来てたよ?」
「お、ほんとだ、見損ねてたわ。ん、ってことは新館に行ったのかぁ…」
なんか洸、僕の顔を見てニヤニヤしてる…紡は行かないの?みたいな顔で見てくる…。
「紡は新館…「行く予定がないので行きません…!」
あははっ!と僕を茶化しながら笑う洸。いつも通り席を取っておくから、早く注文しておいで!とちょっと慌て気味に背中を押す僕。
そして僕が選ぶ席は、いつも通り窓際、陽の当たる、明るい席。
注文を終え、美味しそうな食事とともに洸がいつもの席に座る。今日は【トンカツ定食】にしたらしい。
「力つけないと部活で力尽きるのさ…まじで、毎日食べても食べても腹ぺこ…!」
いつもボリューミーな食事を摂る洸。
でもさすがと思ったのは、どんな食事でも必ず野菜を別添で食べること。身体作りや健康面を自分自身でもしっかり考えているんだと思った。
“いずれ、そういう仕事に就きたいからさ”
洸ならきっと大丈夫!夢、叶えられるよ!
そんなことを考えていると
「あ、いたいた!2人ともぉ〜!お待たせ!」と深結が食事を持って駆け寄ってきた。
そこには、以前から紹介したいと言っていた友達も一緒だった。
「深結、隣の方は友達?」
そう僕が尋ねると「そうだよ♪」と僕たちに紹介してくれたんだ。
「初めまして、
僕たちに綺麗な微笑みとともに挨拶してくれた。その挨拶に僕も「こちらこそよろしく!」と返したのだが…
…あれ、何だかいつもの威勢のいい挨拶が聞こえて来ないぞ…?僕は洸に目をやるとそこには、ぼーっと灯里の顔を見つめては、少し固まる洸の姿があったんだ。
「洸…?大丈夫??」
と洸の肩を優しくポンっと叩くと我に戻り
「お、おぅ、灯里!よろしく…!」
と何だか、らしくない洸がそこにはいた。
「灯里も一緒に食べてもいいかな?」と深結の問いかけに断る理由もなく、僕たちは「もちろん!」と返したんだ。
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