A-8
軽音部のスタジオを後にし、新館にある料理部を目指す僕たち。
料理部へ向かっていると、いい匂いが立ち上がっていて、徐々に僕たちの鼻をふんわりと甘く、幸せにさせてくれた。
「これは…もしや…」
「…うん…え、クオリティ高くない…?」
「うん、肉まんの匂いだ…しかも香辛料もかなりしっかりしてる…」
肉まんの甘い匂いに誘われて、歩みを進めると目の前に料理部の厨房が僕たちの目に飛び込んできて、僕はワクワクしながら2人よりも先に厨房に足を踏み入れたんだ。
「うわぁ……すごい……///」
新館に調理質を構えているだけあって、料理器具もばっちり光り輝いて揃っており、何十人分でも料理を作れそうなゴトクやピカピカの調理台が並んでいた。その光景に僕の気持ちはどんどんと昂っていく。
調理室には女子の先輩が数人いて、その中の部長らしき人が僕たちの元へ肉まんを持って駆けつけてきてくれたんだ。
「料理部へようこそ!私たちが作った自慢の肉まんをどうぞ♪」
部長は肉まんを僕たちに1個ずつ配ってくれて、僕たちは、お礼と共に肉まんを口へと運んだ。
パクっ♪
3人「うわぁ…うんっま…」
ふわふわの肉まんは、皮のほんのりとした甘みとピリッと香辛料が効いた餡、そして噛んだ瞬間にジュワッと肉汁が口全体に拡がり、僕たちの味覚と心を幸せに満たしてくれる。
洸と深結は顔を見合わせて、美味しさのあまりニコニコが止まらない。
僕は肉まんを食べてる途中で興味津々に部長に切り出した。
「この料理部は何人で活動しているんですか?」
僕のキラキラとした質問に部長が料理部の紹介をしてくれたんだ。
・料理部の部員は6人で男子はいない事。
・厨房がこれだけ整っているのは、次年度以降を目標に短期の調理学部を開設予定で準備された事。
・昔は旧館に料理部があり、コンクールで賞も多く受賞していた事。図書室にはOBが作ったレシピ本もあるぐらい人気だったが、その後、老朽化から旧館から調理室が取り壊されたと同時に廃部になったこと。
・現在の活動自体は、学校行事での料理の提供や部の合宿時の料理の提供、コンクールへの参加などフリーダムに活動している事。
料理部の活動や昔の話を聞いた僕は、なんだか勿体無く感じてしまったんだ。
こんなに美味しくて、人を幸せに出来る肉まんが作れるのに…そして、もっとこんな素敵な料理部をみんなに知ってもらえたらいいのに…と。
そんなことを思っていたら、部長が笑顔で僕に切り出してきたんだ。
「君…料理部に入部しない?」
「…えぇっ…ぼ、僕ですか…?」
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