A-5
=====================
(…いいか紡、卵焼きは…こうやって焼くと…)
(…ほら!!ふわふわの卵焼きに大変身だ…!)
=====================
……っ…ひくっ……
気付けば僕の目から涙がこぼれ落ちていた…僕の表情と涙を見て慌て寄り添ってくる深結…涙の事情が分からない洸も慌てて僕に寄り添って肩を抱いてくれた。
「紡、大丈夫か…!?」
「紡、ごめん…悪気はなかったの…」
2人の優しさで僕は正気を取り戻し、2人に「…取り乱してごめん」と一言伝えたけれど、自分が発してしまった言葉に申し訳なさそうに深結は頭を下げきって泣いてしまっていた。
そんな泣いている深結を見て僕は
「…深結、顔を上げて?深結は何も悪くないから…ねっ…?」
渾身の笑顔で深結の頭をポンポンと撫でてあげたんだ。だって、深結は何も悪いことしてないんだもん。
それでも深結は何度も「…本当にごめんね…」と僕に謝ってくれて…
状況が掴めないままも優しく肩を抱いてくれたまま洸にも僕はちゃんと笑顔で気持ちを伝えた。
「洸、ありがとう。まだ会ったばかりなのに取り乱しちゃって…」
僕の言葉に上手に振る舞ってくれる洸。
「落ち着いた時、話したくなった時で大丈夫。せっかく出来た友達だもん。遠慮するな。」
その言葉と共に屈託のない笑顔で僕に微笑んでくれた。本当に心が透き通っていて、本当に優しい人だなって僕は感じたんだ。
でも…でも、まだ…だめなんだ…
◇ ◇
―数分後
深結も落ち着きを取り戻し、僕の気持ちもすっかり落ち着いていた。
「…よし!気持ちも落ち着いたし、しっかりご飯食べて午後は、2人が入る予定のサークル巡りでも一緒に行こうね!」
僕は話題を上手に切り替えたくて2人に声をかけた。2人も「うん!行こう!」と笑顔で返してくれたんだ。
僕たちには笑顔が戻り、また楽しい話をしながら、少しだけ冷めた昼食をしっかりと喉に通していった。
食事を終えた僕たちは、入部したい部活を3人で見て回ることにした。
辺りの在校生は部への勧誘で一生懸命な感じが僕たちにもヒシヒシと伝わってくる。
色んな部活やサークルがある中で、まずは洸が行きたがっていたサッカー部へ3人で行ってみる事にしたんだ。
外に出て気持ちのいい風に当たると、さっきまでの気持ちが何だかスッと晴れるように僕の身体と心を包み込んでくれる。
「うおおおおおおお!!!やってるやってる~!!!」
グラウンドに着き、サッカー部を見た瞬間のキラキラした洸の眼差しは、本当にサッカーをこよなく愛してやまないのだろうと感じる程だった。
そして、なにより腕白な感じでエネルギッシュな洸に羨ましさも感じた。僕はどっちかと言うと引っ込み思案だから、洸のような性格が正直、羨ましかったんだ。
「ちょっと行って話してくる!!!ここで待ってて!!」
僕たちに言葉を残し、先輩の元へ駆け出していく洸。僕と深結は近くの芝生に腰をかけて洸が戻ってくるのを待つことにした。
芝生に座りながら洸の帰りを待っていた時、深結がまた色々と教えてくれた。
深結の話だとサッカー部は校内でも人気の高い部活で、有名選手も何人か輩出されているのだとか。
(それは洸も目がキラキラするよな…)
なんて考えていると深結がそっと口を開く。
「サッカー部って…イケメン多いよね…」
(な、なんかここにも目がキラキラしてる人がいる!)
でもよく辺りを見渡してみたら、男子生徒よりも女子生徒の観覧客の方が多いのは確かだ。キャーっと黄色い声も聞こえるぐらいだし…。
「ファンクラブもあるぐらいだからね…」
そう言われてみれば、サッカー部って爽やか系なイケメンも多い感じがするし、ファンクラブぐらいはあるのかな…?なんて考えていると深結が徐に携帯を取り出し、僕に問いかけてきた。
「あ、そうだ!紡は学校や部活内のSNSがあるの知ってる???」
SNSがあることを知らなかった僕は「ううん、知らなかった」と首を振って答えると深結はパパっと画面を操作して、学校のSNSを見せてくれたんだ。
僕が興味のある料理部や洸のサッカー部、各々の活動の情報や部員のプライベート画像など多種多様にやり取りがされているようだった。そして投稿には自由にコメントも出来るらしい。あまりSNS自体を利用してなかった僕はちょっぴり新鮮な気持ちになったんだ。
「SNSでこうやって大学の活動とか見れるんだ…知らなかったや…」
「このSNS見てると色んな情報を得られたりするからこれからはチェックしてみるといいよ!」
深結は手馴れた手付きで携帯を操作し、僕のLINEへ学校のURLを送ってくれた。
「ありがとう。今後時間を見つけて活用してみるね!」
ありがとうの意味も込めて僕は、深結にニコッと微笑んで返し、それに対して深結も「いえいえ♪」とニコッと返してくれたんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます