第46話:フローラ視点 ※胸クソ注意

不快なネグレクト表現があります。

―――――――――――――――




「今日から下女の館へ移動してください」

 久しぶりに掃除メイドが来たと思ったら、掃除後に家具にどんどん布を掛けていく。

 私の荷物は木箱に入れられて家の外へ運び出された。



 ユダの荷物も木箱に入れられた。

「これだけですか?」

 一番小さい箱に入ったユダの荷物を見て、偉そうに何かを紙に書いている男が聞いてきた。


「お金が無いんだから、しょうがないでしょ!」

 私の言葉を聞いて、男は私の荷物の入った木箱を見た。

 一番大きな箱に10箱ある。

「何よ、文句あるの?ドレスはかさばるから箱を使うけど、数は少ないわよ」

 あの女が3着作るのに、私は1着しか作ってもらえなかったんだから。


「ドレスは全て引き取って貰って、ユダが成人した時に渡すように手続きしましょう。宝石は無かったのですね?ここに来る前のは、返金に使われましたからしょうがないとはいえ……こんな趣味の悪いドレスしか無いとは」

 趣味が悪いですって!?私の魅力を発揮するデザインに文句を言わないでよ!



 昼寝をしていたユダを教会のシスターが連れてきた。

「この子は教会で引き取ります。栄養状態も悪いし、言葉も遅いし、オムツを外す訓練もしてないようです。シッターを雇えなくなったはずなのに、保育所に来ないから心配はしていたのですが」

 いつの話してんのよ。


「保育所に連れて行っていない?食事はどうしていたのですか?」

「ちゃんと食堂から持ってきてやってたわよ、夜に」

「夜だけですか?朝と昼は?朝食前に保育所に連れて行く事になっていましたよね。自分だけ食堂で食べていたのですか!」


 うるさいわね。

 私はヤコブの世話で疲れてんのよ。

 なんで世話しに行く前に保育所に連れて行って、帰りに迎えに行かなきゃいけないのよ。

 どうせ子供なんて寝てるか遊んでるかなんだし、部屋に置いておけばいいのよ。



 ヤコブだって、もうここには来ない。

 ベッドから起き上がれないんだから、ユダに会いにも来ない。


 私、王太子の正妃になって、王妃になって、国母になるはずだったのに。

 下女の館って何よ。



 下女の館って言われたのに、窓も何もない建物に連れて行かれた。

 仕事で呼ばれる事が無いのは良いけど、扉が開かないから出れない。

 食事は出るけど、メイドの食事よりまずいってどういうことよ。


 何日過ぎたのか、頭が痒くてしかたないわ。

「出ろ」

 何か凄い剣とか持った人が来て、私の腕を掴んで引っ張った。

「痛いわね!何すんのよ!私を誰だと思ってんの!?王太子の妻よ!」

 大股で歩く男は、私が何を言っても何も反応しないで歩いた。


 私が男の歩きについて行けなくてつまづいても、止まりもしないで歩き続ける。

「痛っ!痛い!ちょ、ちょっと!止まって!止まってよ!」

 私は引きずられていた。

 抵抗しようと体をひねっても、地面に体が擦れても、男の足が止まることはなかった。



 壁の外へと放り出された。

 こんなところに扉なんてあったんだ。

 隠れていたから知らなかった。

 使用人出入口とも違う。

「一生出すな。それが議会の決定だ」

「ヘッヘッヘ。かしこまりました。ですね」

 下卑た笑いを浮かべた男の足元へ投げ出された私は、男の仲間に馬車に押し込まれた。

 頑丈な木でできた、椅子も何もないただの箱。


 何が起こっているの!?



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