第45話:フローラ視点 ※胸クソ注意?




 あの女が子供を産んだ。

 男の子だった。


 私が生んだ、ヤコブの息子のユダ。

 長男だから王位継承もあり得るって言われてたのに、周りが急に「一人で生きられるように教育をしろ」って言い始めた。

 あの女が子供を生んでから変わった。

 剣術を習うはずだったのに、禁止された。

 マナー講師を頼むはずだったのに、必要無いって言われた。


 それまでうちの子の世話を熱心にしていたシッターは「他での仕事が決まったので、辞めさせめて欲しい」と毎回言うようになった。


 最後の方には「早々に教会に預けた方が良いですよ。私から出来る最後の助言です」とか「ここまでお世話した子供ですから、私にも多少の情が湧いてます」とか「分別が……いえ、物心がつく前じゃないと駄目ですから」とか訳のわからないことを言うようになった。



 王宮に呼ばれる頻度が増えた。

 ヤコブが動けないからだ。

 前は話せない、立てない、くらいだったのに、最近は一人で体を起こすこともできないのよ。

 なのに、性欲だけは衰えない。

 最近は手で扱いてやるだけだけどね。


 なんの病気なのか知らないけど、感染うつる心配はないらしい。

「頭だけは正常だから、言動には気を付けてね」

 ネイサンとかいう人に言われた。

 学生時代にいつも一緒にいたハロルドの弟だって言ってた。

 私のことを上から下まで見て、笑った笑顔が何か怖かった。




 ドレスを買った。

「必要無いとは思いますが、どうしますか?」といつも王宮の役人に聞かれるので、毎回「必要ですから作りますわ」と答えている。

 出来上がったものを試着して、その後は着れない。

 メイドがいないから。


 宝石も毎回見せてもらうけど、私好みの物はないから買わない。

 もっと私に似合いそうな可愛い物を持って来るように商人に言うけど「王太子妃様の為に持って来る物ですから」と毎回言われるから、ムカつくから買ってやらないのよ。

 商売が下手ね。




「ご飯が無い!?」

 いつも届けられるご飯がテーブルになかった。

 厨房に文句を言いに行ったら、「王太子の分のお金が無くなったので、食事は無料の物になったんだよ。メイドと同じ物を食堂で食べてよ」とか言われたんだけど!

 せめて届けなさい!と命令したら、「前は届けるのまでが値段に入ってたけど、メイドの食事は食堂で食べんだよ!」と怒鳴り返された。



 ヤコブの世話をするのが大変になった。

 前は排泄の世話は他の人がやってて、私は食事の世話とか性欲処理がメインだったのに、排泄も私の仕事になった。

「介護の人を雇うお金が無いからです。貴女がドレスを買わなければ、次の支給日まで保ったのですがね」

 納得いく説明がなければ世話をしない!と言ったら、ザイムとか言う人が来た。


「王太子の世話をする人は、王宮で払うべきでしょ!」

 王太子のお小遣いは、のはずよ。


「王太子のすべき事を全然なさっていないのに、通常の金額が支給されている事に感謝するべきです。そもそもあなたが居なければ、介護する人を雇っても余るほどの金額なのですよ」

 鼻で笑われた。

 ヤコブに愛されていたとしても、そんなことは関係ないって、今更わかった。



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