第23話

 



 全ての日程をこなし、王都へ帰って来ました。

 帰りの馬車でコッソリ聞いたのですが、マリリナ様のお兄様は、サンドラの初恋の人なのだそうです。

「隣国の王女様と婚約したと聞いたのですが、違ったのでしょうか?」

 マリリナ様が「兄より先に婚約」と言っておりましたので、その情報は間違っていたのでしょう。


 楽しい時間はあっという間に終わってしまうのですね。

 また学園が始まりました。

 まぁある意味、こちらも楽しい時間ではあるのですが。



 長期休暇が明けると、フローラはまた生徒会室に来るようになりました。

 食欲は戻ってきたようですわね。

 まだお腹は全然出てないように見えます。

 前回も含め、私は出産経験が無いのでいつ頃からお腹が目立つのか判らないのです。

 前回フローラの妊娠を知ったのは、卒業後のパーティーでした。

 ドレスでしたし、お腹は全然目立ちませんでしたわ。


 パーティー……そうですね。

 そろそろフローラがだと発表しなくてはいけませんね。

 学園内でいくら認知されていても、対外的にはまだ側妃候補はいない事になっています。

 既に王宮に住んでいるのにおかしな話ですが、それがまかり通るのが今の王族なのです。


 今度の学園祭は、保護者や卒業生などを招いてパーティーで締め括りましょう。

 そこで王太子にはフローラをエスコートしてもらえば良いのです。

 学園内ですので、婚約者をエスコートしなくても問題有りませんわね。


 あくまでも学園祭の一環ですので、新しくドレスやタキシードを製作するのは禁止にしましょう。

 どうしても今あるドレスが着られない方は、生徒会から貸出しをする事にします。

 高位貴族の方々にお願いすれば、もう着ないドレスを寄付していただけるでしょうし。

 私も一度しか着ていないのに公の場で着てしまったので、もう着られないドレスが何着かあります。

 王族主催のパーティーで着たドレスは、二度と着ないのが暗黙のルールなのです。

 下位貴族の方は手直ししてまた着られる方もいらっしゃいますが、高位貴族ではそれは恥となります。

 勿体無いですわよね。



「それならばいっそ、女性は全員貸出しにしましょうよ」

 サンドラが提案してきます。

 必要最低限しかパーティーに出ない私と違って、サンドラは着なくなったドレスがかなりあるそうです。

「私、アンシェリー様が前々回着ていた青いドレスが着てみたいです」

 カレーリナもサンドラの案に賛同します。


「では、まずどれくらいドレスが集まるかを見てみましょう。マリリナやフェリシアにも声を掛けてみます」

 タイラーが早速、学園に許可を取る書類の作成に入ります。

「フェリシア……様?どなたですか?」

 ネイサンが問い掛ける。

 あ、やはり知らない方ですわよね。

「あぁ、まだ紹介してませんでしたね。学園祭で会えますが、マリリナの恋人です」

 とても大きな爆弾が投下されました。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る