第22話

 



 フローラが生徒会室に顔を出さないまま、夏季休暇へと入りました。

 私は予定通りサンドラと旅行へ行きます。

 毒の話はあのまま有耶無耶になりましたので、フローラが側妃教育の重圧で胃が痛んでいる、となったのでしょう。

 妊娠の噂もありませんし、医者には診せなかったようですね。


 まずはカレーリナの居る領地です。

 とても自然豊かで、美しい湖や見渡す限りの花畑など、楽しく散策しました。

 ネイサンも隣の領地から遊びに来ました。

 2泊して、そのままネイサンの領地へと移動します。

 嬉しい事もありました。

 カレーリナとネイサンが正式に婚約しました。


 婚約披露パーティーは、私達がネイサンの実家に滞在している間に開いてくださり、参加する事が出来ました。

 ネイサンの領地は、カレーリナの実家の領地より山岳地帯なので、森や山が多いです。

 鉱山での事業は、二人の家が共同で行なっている事も多いので、とても仲が良いのです。


 それにしても身内の婚約披露パーティーなのに、ハロルドは出席していませんでした。

 王太子を招待しなかったからでしょうか?

 でも普通、伯爵家の婚約披露パーティーに王族は招待しません。

 王都でならともかく、今回は領地での開催ですから尚更です。


 ご両親も、王太子にベッタリで、あまつさえ入学を1年遅らせたハロルドを、既に見限っているように感じてしまいました。

 ネイサンとカレーリナと二人のご両親。そしてカレーリナの姉二人とその旦那様。

 素敵な家族ですわね。



 私の家の領地と、サンドラの家の領地へも足を伸ばしました。

 途中の街で宿泊をして、買い物をして、経済を回します。

 今頃王都の屋敷では、届いた荷物の多さに驚いているかもしれません。

 寄った街全ての特産品を買いましたもの。


 あまり他所の街に出回らないと言われた布はとても綺麗で、カレーリナとサンドラと色違いで買いました。

 卒業パーティーは、この布で作ったドレスを着る予定です。

 この布は、別に規制があって出回っていないのではなく、販路を広げる伝手つてと財力が無いのだそうです。

 サンドラの家が喜んで乗り出して来そうですわね。

 繊維関係は得意分野のはずですもの。




 最後に寄ったタイラーの所で、またまたおめでたい事に遭遇しました。

 タイラーの誕生日パーティーだったのですが、そこで婚約者が発表されたのです。

 サンドラの領地と近い公爵家の長女との事でした。

「兄より先に婚約してしまいましたわ」

 コロコロと笑う彼女は、儚い見た目と中身が合っていないようです。

 名前はマリリナ様で、私達より一つ上です。

 彼女と挨拶をしている間、なぜかサンドラはずっと大人しかったですね。


 正式な婚約披露パーティーは、王都で後日行うそうです。

「その時は兄も来ますので、よろしくお願いしますわね」

 マリリナ様は、サンドラへ向けて言っていたように感じました。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る