第11話 祭りはやってくる・・・

4月を終えると、あっという間に5月になった。気温も春の陽気と言えないような暖かさになり、暑い時にはブレザーを脱ぐ生徒がチラチラ見える。

そして5月と言えば祝日、皆が大好きなGWがあり、その日が近づいてくるたびに「どこに行くか・何するか」なんて話が飛び出して聞かない日がないほどだ。


さらに学校行事で言えば体育祭がある。3年生は今年で最後、1年生は高校生活最初のイベントと言えるだろう、4月の後半からは「なんの競技にでる?」なんて会話耳にしていた。その後には皆がやりたく無い中間テストとイベントがあり、きっと飽きる事が無いだろう。


そして、俺たちのクラスでは何の競技に出るかという話し合いがHRの時間に行われていた。


「それじゃー、体育祭の参加競技について話したいと思います。まずは順番に聞いていきたいと思うので、出たい競技に手をあげてくださいね」


体育委員のやる気ない進行から始まった競技決めだが思いの他、早く物事は進んでいった。騎馬戦・借り物競争・障害物リレー・・・うちのクラスは、行事に対してやる気のある生徒ばかりなのだろうか、一人一人が出たい種目に手を挙げていく。


拓馬も、障害物リレーに参加をしつつも、他の競技に参加しているほどだ。ちなみに種目に関しては、一人二つまでは参加していいことになっている。人数合わせ的な理由からなのだろう。


「じゃあ最後に選抜リレーについてだけど、男子と女子分かれてやるから四人ずつね。選び方は、50mのタイムで早い順から選んでいきたいんだけどそれでいいー?」


そう言いながら、男女各4人のタイムが早い人たちを書き出していった。


(まぁ、運動部の連中が早いんだろうし、俺はクラスリレーを参加して終わりかな)


体育祭になると、各競技別で放課後や朝練習が入ってきたりする。俺はそれが、去年参加した騎馬戦で嫌という思いをしたので参加を見送っているのだ。バイトの時間を調整しなければならないし、朝も早く起きなければならない。一定期間ではあるが、自分のルーティンが崩れるという訳なので参加をしたくなかった。


「男子のリレー走者を発表しまーす。葉山、田中、樋口あと直江!この四人で今回のリレーはお願いします!」


「以上で終了!」と締めたのちに、HRの時間は終わった。各々が陣形を考えたり作戦を考えているさなか、俺だけが頭を抱えていた。


「なんでだよ・・・一体どうして・・・」


そんな俺の姿を見ていた、一番の友人は一人でか笑っていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


休み時間、俺は一人で自販機まで足を運んでいた。特段、飲みたいものなんてなかったが、一人になりたくて居室を出て過ごしたかった。

『クラス選抜リレー』それは、全種目の中で一番注目を浴びること競技で、目立ちたくない人にとっては地獄のような種目。俺は購入したコーヒーを飲みながら、当時、全力で50Mを走った自分を恨みたかった。


(何でこんなことになるんだよ・・・もう一回、やり直してぇ・・・)


小言をブツブツ呟くしか、この思いは発散できない。ひとしきりため息をついているとスマホに短めのバイブレーションが鳴った。差出人は『椎名由衣』何かあったのだろうか、中身を開いてみると


『急な連絡ごめんなさい。放課後、一緒に帰りませんか。少し相談したいことがあって』


なんだろう、中間テストの範囲だろうか。勉強に関しては自信がないからあまり教えられない。とりあえず、放課後にあって話を聞こう。


『りょーかい、授業終わったら昇降口辺りで待ち合わせしよう』


トークの画面に既読がついたのを確認した後、足早に教室に戻っていった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


放課後になり生徒各々が、自分たちの目的地へ向かっていくさなか、待ち合わせをしている俺は早歩きで、昇降口に向かっていた。

(今日はバイトもないし体育祭の練習も来週からだ、いち早く帰りたい。てか、由衣さんのクラス授業終わるの早すぎだろ・・・!)

放課後のHRが始まる直前、携帯を見ると『授業終わりましたので先に待っていますね』なんて送られてきたのだ、あまり人を待たせたくない性分として急いで向かっていた。


下駄箱に行き靴を履き替える。あたりを一度見渡して彼女を探すと、昇降口を出てすぐそばにある屋根の下のスペースで彼女は待っており、声を掛けた。


「お、、、お疲れ、、、さま」


「あ!お疲れ様です。急に呼び出してすみません」


「別にいいんだけど、それにしても由衣さんのクラス授業終わるの早くない?なんかの、短縮?」


「担任の先生が、あまり話したがらない先生でして・・・HRなんて別にやらなくてもいいでしょ、なんていう人だから早く終わったんです」


なるほどそうゆう事か。担任は誰だろう、2年ほどこの学校にいるが思いつかない、後で確認しておくとしよう・・・


「ところで今日はどうしたの、なんか焦っている文面というか」


メールでは聞かなかったが、普段彼女のほうからメールを送ってくることはない。俺はそこがどうしても気になっていた。


「・・・出ることになったんだ」


「ん?何に出るって・・・・」


「競技に出場することになったんだ・・・しかも借り物競争・・・」


落ち込んでいた理由がようやくわかった。話からすると彼女のクラスでは、あまり協議に参加したがる生徒が少なく、どの種目も出場選手が足りていなかったらしい。

その結果、クラス内でくじ引きが行われ、当たった生徒がその種目に参加する形式となり由衣さんは借り物競争に出ることになった。


「本当は何も出たくなかったんだ・・・運動が苦手だし、絶対みんなにも笑われる」


はぁぁ…なんて大きなため息をこぼし方を落とす。運動が苦手な人にとって、大舞台で走ったりすることがどんなに辛い事か・・・


(何とか彼女を元気づけてあげたんだけど…あ、そうだ)


「由衣さん、今週の土日どっちか空いてる?」


「え?えーっと、確か日曜日だったら空いているはず」


「じゃあ、一緒に甘いものでも食べに行こう。辛いときは、そういったものを食べたほうが体にいいと思うし」


「そ、そうかな・・・いや、うん。よろしくお願いします///」


元気がない彼女の姿はあまり見たくない。そうして、初デートが決まった。







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