第8話 彼女の秘密
〈食堂にて〉
「いやー、急に呼んでごめんねー。妹が始業式が終わってからの話をよくするもんで、ちょっと気になったからさ」
「別にいいんだけど、顔を知らない男子と昼ご飯を食べることに何にも思わないの?」
彼女の名前は椎名沙苗
由衣さんの姉であり奏多さんの妹で、いわゆる次女であるが、他2人と違って見た目は完全にギャルっぽい。けれど、よく見てみると雰囲気や目元が少し似ており、やはり姉妹なんだなということがわかる。
しかし、何故今こうして彼女とお昼を共にしているのか。俺にもよくわからない。
元々、拓馬たちと食べる約束をしていたが、急な部活動の招集で急遽1人になってしまった。
とりあえず食堂にでも向かった矢先に彼女に声をかけられ一緒に食事をすることになった。
「別に〜、私あんまり気にしないタイプだからさ。でも、嫌いな人とは食事しないよ?そうゆうことだから大丈夫だって」
「あっそう…それならいいんだけど」
(何か他2人より掴み所がないな、長女の方はthe清楚って感じだけど芯がある感じだった。末っ子の方は、幼い感じだけど素直。けれど彼女は他2人より何か違う)
姉妹だからと言って性格は非になるもの。違って当たり前だが、纏ってる雰囲気というものが似ていないようだった。
「てか、椎名さん。結構食べるんだね…うどんに親子丼。それに、唐揚げなんて」
「昔から一番食べるんだよね、私。あ、椎名だとアレだし沙苗でいいよ。そっちの方が呼び慣れているし」
「早苗さんね、そう呼ばせてもらうわ」
だいぶフレンドリーな感じで呼ばせてもらえるようになった。
直感で、彼女は姉妹の中で一番男性慣れをしているのだろう、女子と話しているときに感じる壁のようなものを感じなかった。
(けれど、どうして話しかけてきたんだろうか)
「妹が話をして~」なんて言うが早苗さんとは一切、会ったことがない。顔を知らない中でよく、自分に話しかけれたと思うが、彼女は「その相手が誰か」ということを認知して話しかけてきたのだろうか。
「でも、早苗さんとは一度も会ったことがないのによく話しかけることができたね。何組かも言ってないのに」
「んー、何組の誰かってことはわかっていたよ。直江涼太、由衣ちゃんの初恋の人でしょ?」
・・・どうして彼女がそんなことを知っているんだ!由衣さんは俺のことを覚えていなかったはずだし。もしかして、早苗さんは覚えているのだろうか。
「そうだよ・・・あの時、図書室でいつも遊んでいたのは俺なんだ。けれど、彼女は覚えていなかったはず」
「まぁ、好きな人と幼いときに別れちゃったらショックで憶えていないんじゃないかな?でも、私たち姉妹は覚えているよ。だってさ、いつも暗かったあの子が急に明るく友達の話をし始めるんだもん、忘れるわけないじゃん」
頭が追い付かない。彼女自身は覚えていないけど、姉二人は覚えているということなのか。
「まぁ、憶えていなくてもさ。今でも好きだったら声をかけてあげてよ。由衣ちゃんもそのうち思い出すかもしれないしさ」
そうゆうと彼女は「ごちそうさま」と言い、席から立ち上がった。自分も食べ終わっていた為、同じく席を立ち食器を返す。
「あ、連絡先交換しておこうよ。同じ学年だしさ、いい機会じゃん」
「ん、はいよ。よろしくね」
交換した後、予鈴が鳴る前に彼女は教室に戻っていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(あっぶな~、あの子話していないって言ってたもんね)
危うく言いそうになったが、辛うじて話さずに済んだ。私自身、口が軽いのでつい言いそうになる。
(早く言えばいいのにさ。由衣ちゃんも変に強がっちゃうんだよね・・・まぁ、そこが可愛いんだけどさ)
妹の恋を楽しみに春は進んでいった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます