第7話 お姉ちゃん登場
新学期も始まり、この日から授業開始となった。
最初の授業は現文、春休みの明けのテストという事で2年3組の生徒は皆、ため息をついていた。
「いやー、新学期早々、現文はキツいわ…
てか、平均点以下は課題ってなんなんだよ…涼ちゃんどうだった?」
「俺は別に。多分平均はいけてる。
まあ、拓馬は部活もあったからしょうがないんじゃね?」
「それはそうだけどさ〜」
そんな事をブツブツ呟きながら俺と拓馬は10分間の休みを利用して、自販機で飲み物を買いに行っていた。
現文のテストが終わると拓馬が「テスト頑張って頭に糖分が足らない」なんてことを言い出し、俺も付き合わされ今に至る。
(結局、土日は連絡出来ず終い。土日もバイトしてただけ・・・やっぱり直接会って話したほうがいいのかなぁ・・・けど、向こうは一年生だし学校にも慣れてないだろうし)
あの夜、やり取りをして土日を迎えたのだが、結局は何も連絡をしていなかった。
いや、出来なかったといった方が正しい。内容を考えるにしろ向こうは一年生、学校の話を触れることもできず、過去話をしても憶えていない。
土曜日の朝は、携帯に張り付き少し考えていたが結局のところ、何も思い浮かばずそのままバイトに行ってしまったのだった。
(女子と何話せばいいんだよ・・・)
コミュ障とまではいかないが、嫌われたくない一心で考えると何も思い浮かばない。そんな、こちらの気を知らずにテストが終わりテンションが上がっているのだろうか、拓馬が始業式後のことについて話しかけてきた。
「涼ちゃんコレ見てよ。ボーリングハイスコア!!凄くね?俺苦手なのに」
「ガーターに愛された男だもんなお前。建人とかほかの連中は、平均的なスコアなのにお前だけベストスコア更新するなんて・・・ハンデでも貰ったのか?」
「どんだけ下手だと思ってるんだよ!」
多分、新学期早々、廊下でこれほどテンションが高いのは俺たちだけだろう。馬鹿話をしていると気づいたら自販機のところまでついた。
「早く買って帰ろうぜ、次の授業遅刻はまずいし」
自販機で何を買うか迷っている最中、拓馬が昇降口からこちらに向かってくる女子生徒に気がついた。
「あれ、あの人って3年の転校生じゃん。めっちゃ美人の」
(あれが彼女のお姉ちゃんの1人…確か名前って)
椎名奏多(かなた)
背丈は由衣さんよりも大きいだろうが、特段高い感じじゃない。なんなら、女子の平均身長だろう。髪も彼女とは正反対のショートカットだが、艶もあって一眼で美人とわかった。
「ん?」
彼女の姿を眺めていたせいかこちらの存在に気づいたようだ。
「…こんにちは」
「あ、こんにちは」
顔見知りでもないし、何なら今日初めて顔と名前を知ったぐらいだ。急に挨拶して向こうもびっくりしただろう。
(とりあえずこの場から離れたい…)
「なぁ、買うもん買ったんだから早く戻ろうぜ。遅れるぞ」
「ん、そうだね。行こ行こ」
そう言うと拓馬は自販機から出た飲み物を手に取り、彼女に一瞥した後その場を後にした。
「…そっか、彼のことか」
・・・・・・・・・・・・・・
結局、戻った時間は時間ギリギリで「どんだけ仲良しなんだよ」なんて周りにイジられつつも、授業は進んでいった。
そして、気づけばもう4時間目も終わりお昼休み。
「拓馬、お昼どうする?学食行くか?」
「あっ、悪い。今日の昼さ新入生歓迎会の話し合いがあるからいけないわ!」
「悪い!」なんていいながらダッシュで教室を後にした。
(新歓か…もうすぐだもんな)
部活をやっていない身として、忙しさもありつつ日々充実しているような気がして時折、部活勢が羨ましくなる。けれど、部活としてやるほどやる気は特にない。
(こればかりしょうがないよな…しかし、どうするか。他クラスのとこに行くか)
ぼっち飯はしたくない。とりあえず、他のクラスに行こうと教室を出た時、後ろから声をかけられた。
「あー、君が直江涼太くんだっけ?」
(え、誰??)
黒髪ではあるが、毛先は少し巻いてるようなで
Yシャツの第一ボタンを開けている。
第一印象として完璧にギャルな女子が、まるで自分を待っているかのように話しかけてきた。
「あー、私。椎名沙苗(さなえ)妹がお世話になっています」
今日はやけに話しかけれるな…
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