39話 3文字の真実

「猫の名前は知っていますか?」

「……いや」

私はポケットに入れていた物をテーブルに投げつける

シャリンと乾いた音が、冷えた部屋の空気を揺らした。

「これがあの子の名前です」

小さなプレートが付いていた子猫用の首輪だ。

「兄は私にも教えてくれなかかったんですよ。多分恥ずかしかったから。まぁ本当の理由はもうわからないんですけどね」

レンはテーブルからそれを拾い、ひんやりとする金属のプレートを裏返すとそこには

「REN」

の三文字が刻印されていた。


「子猫に首輪は危なくてダメらしいんで、兄もそういうの厳しい人だから、付けるつもりは多分なかったんでしょうね。注文してから一ヶ月かかるそうなので、一ヶ月前には決まってた名前です。

貴方を家に呼んだのは、実家に引き取られる前に猫に会わせたかったからですよ。まぁそれも憶測ですけど」


「あ、あとスマホのパスワードロックですけど、20150412でしたよ」

そう伝えてもレンはピンと来ていない様子だ。

「結成日です」


その言葉にずっと下げていた顔をあげ、ハッとした様に私の顔を見た

その表情に、何故だか無性に腹が立った

推しを見てこんな感情になる日など、一生来て欲しくなかったのに。

でも、もう止まれない。


「それに周防紅一なんて人間、存在してないんですよ」

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