38話 告白③

「灰崎さんはこの事実を世間に公表することを躊躇った。

そしてコウが居なくなったとしかメンバーには伝えなかった

でも皆の反応はあっさりしていた。本当にただの業務連絡を受けただけのようで、心配してる素振りもない。

成人男性が誘拐もないだろうし、自らの意思で失踪したと思い込み、各々理由を勝手に想像して納得していたんだろう。


俺は警察の事情聴取が終わってからもまだやらなければいけない事があった。

電話の相手が誰なのか知っておきたかったからだ。

一瞬だし、そもそも写って居たかも分からない様が、可能性は全て潰したかった。


電話をしそうな人物、メンバーやシエルってキャバ嬢とかにそれとなくコウから連絡があったか探りを入れたけど、誰もそれらしいリアクションはしなかった。


妹が居る事は聞いていたし、電話の相手の上位候補だったけど、顔も名前も知らない相手を特定するのは無理だと諦めてたんだ。

まさか、何度も会ってる相手だったとわね」



一通り話終わると、レンは自暴自棄になったのか変な清々しさを身に纏い始めた。

「それで?どうするの?僕を警察に突き出す?」

もう挑戦めいた響きを含み始めたレンの言動は、部屋に入ってきた時にあった申し訳なさのカケラは溶けて消えてしまったようだ

「そもそもあの時映っていたなら、何故直ぐ通報しなかったんだ?証拠がないからだろ?コウのスマホにも何も残ってなかったなら、いよいよ証拠なんてどこにもないだろ」

「良いんですよ、それで」

レンは言い逃れるつもりで用意していた釈明の言葉を強制終了させられて、

一瞬言葉を飲み込むのに苦労したような苦しい顔を見せた。


「正直どっちでもいいんですよ。

悪意があったとかなかったとか、突き落としたとか事故なのかとか

問題なのは「何故」です」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る