37話 告白②

「コウはまるで本当に俺に感謝しているかのように錯覚したよ。

でもコウの事を信用出来なかった……いやその言い方は狡いか。信用したくなかったんだ。


俺が真意を問い正そうと口を開きかけた時、コウのスマホが鳴った。

コウは表示された名前をを見ると嬉しそうに笑って、俺に軽く手を上げて断る仕草をしながら電話に出た。

「あー」とか「うん」とか簡単な相槌を打ちながらベランダに出て行った。


数分話していたけど、見えるとか見えないとか言い始めて、カメラに何かを写そうと動き回っていたから、テレビ電話に切り替えたのだと思った。

その内コウはベランダに置いてあったプラスチック製の小さな椅子の上に乗り、背伸びをして、何かを一生懸命電話の相手に見せている様子だった。

俺がベランダの窓の近付くと、コウは俺を手招きして電話の相手に言った

「そうだ、もっと良いもの見せてやるよ」と

そして俺を写そうと身体を捻った時、バランスを崩した

それからは一瞬だった。


驚いて身体の血流が一瞬止まって、心臓まで止まった様に錯覚したけど

ベランダから恐々除いた先に落ちてるものを見た時、心臓が大きくドクンと動いて

そこからはいつもより元気に動き出した。


どんなに才能があって

沢山の人に愛されて

眩しく輝くような存在でも

あぁ人間の原材料って本当に全部同じなんだと思ったよ。


やることは多かった。でも頭はいつもよりスムーズに動いた気がしたよ。


まずコウが最後に話していた人物は誰なのかを突き止めなければいけなかった

履歴を見るのが1番早いけれど、まずスマホが見つからない

下にも落ちてないし、このベランダの中にあるはずだって必死で探したよ。

落ちる時に飛んでコウが育てていた花のプランターの間に入ってて見つけるのに時間がかかった。

その間にロックがかかってしまって、結局電話の相手を突き止める事は出来なかった。

コウのスマホを探しながら自分のスマホで灰崎さんに連絡して、灰崎さんが警察に連絡した。

それから15分くらいで警察が来て事情聴取を受けたけど、意外なほどあっさりと事故と処理されたよ」

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