31話 ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎の証言①

【アスタリスク センター赤担当 周防紅一の妹の証言】

私の好きなアイドルは、ずっと完璧だった。


兄がアイドルを目指して上京したのは5年前のことだ。

昔から明るくて人気者だった自慢の兄は、子供の頃からずっとアイドルに憧れていた

田舎に居た時から街に唯一のダンススクールに通い、カラオケチェーン店も無いような土地なのに

幼少期から聖歌隊に入り基礎を身につけ、中学に上がってからもバンドをやってる知人の元で歌のレッスンもしていた。

特に歌のレッスンはほぼ素人で独学と大差無いはずなのに、それでもサボることなく毎週通っていた。



そんな努力をずっとそばで見て来たから、勿論成功して欲しかったけれど、兄の実力が東京で通用するのか不安だった。

が、そんな心配をよそに、兄は4社のアイドルオーディションを受け、その全てに合格した

その中から1社を選び、あっさりとアイドル活動を始めた。


兄をセンターにしてくれるというその事務所の説明を

私たち家族も受けるために東京の事務所を訪れた。

その時、灰崎さんと言う人と名刺を渡され、今日からマネージャーを担当すると自己紹介された。


兄は新しく作られるアイドルグループのセンターに抜擢された。

他のメンバーの人達は、兄が言うには皆才能があって、いい子達だそうだ。


アイドルとしての兄の言葉には嘘は無かった。

本当にファンの事を大切にしていた



ステージで兄は笑顔でファンに向かって言っていた

「いつもありがとう」

「ファンの皆に背中を押して貰ってるよ」

「ファンは宝物だよ」

「みんな大切だ」

その言葉は全部本当だった

彼は求められるなら永遠に輝く続ける覚悟をしていた



嘘ばっかりなのは、この世界の方だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る