17話 メンバーカラー緑 セイの証言

【メンバーカラー緑 セイ 柳青磁の証言】  

「3ヶ月くらい前かな。コウはヒロの誘いで会員制のキャバクラに行ったんだ。そこからコウはその店に何回か通ってるようだった。

コウはプライベートのアカウントでその子をフォローしてたし、多分付き合って居たのは本当だろうな。

それだけでも十分スキャンダルではあるけど、でも問題はここからだ



コウは覚せい剤に手を出してたんだよ」


セイは手に持っていた高そうな瓶入りのミネラルウォーターを少し零しながら飲んだ。

袖口で口を拭うとまた話し出した。


「そのキャバ嬢に薦められたのか、店の人になのかは知らないけど、売人と付き合いがある人が居たんだろうな。

アイが言う脱退する気だったというのは、最近のコウがやる気がなく見えたからだろうけど、それは違う。

薬が切れたからだったんだ。

俺も何回か飲んでる所を目にしたよ。ボーッしたり、集中力がなかったり、実際日に日に痩せていってたし、それに喉が頻繁に乾くようだった。

イライラした様子の日もあるかと思えば、突然スマホを見て笑い出したり情緒もおかしくなっていた。

それでも俺としては普通にアイドル業さえやってくれれば問題はなかったのに、それが問題になる出来事が起きたんだ」

そう言って柳は床を指差し

「ここのマスターから聞いたが、近々薬の密売人達が一世摘発されるらしいんだ。

そうなれば当然購入者のリストも警察の手に渡る。

それに載ってしまってるんだろうな…コウも」


私は柳の次の言葉を待ったが、話はこれで終わりらしい。


「そう…ですか」

「そ。実際は恋愛スキャンダルや脱退よりもっとヤバい理由だったんだよ。

まぁ今頃コウは薬抜きの為に療養施設にでも入ってるんだろう。もし薬物使用が報道されても解散からの芸能界引退って事にして有耶無耶に揉み消すつもりなんだろう」

そう話す柳は名探偵が推理を披露した後のような、爽快感とでも呼ぶ様な清々しい態度だった。

きっと彼の頭の中には、軽快なBGMが流れて居るのだろう。


「アイドルとか言ってても所詮は事務所の商品だからさ。要らなくなったら、あっさり捨てられるんだよ。

どう?納得出来た?」

その確認は、私に衝撃の事実に驚いて欲しいかのように思えて、不愉快だった。

私は意地でも彼が欲しがる言葉をあげたくなくて無言を貫いていると、柳は面倒くさそうにため息をついた。


「話の裏付けになるかは分かんないけど、コウが入れ込んでたキャバ嬢のアカウント見てみたら?

【キャバクラ モーヴ シエル】で検索したらすぐに出て来るよ。

俺から話せるのはこんなもん。じゃもう良いでしょ」

と言うと柳は怠そうに立ち上がりドアに向かい、鍵を差し込んだが、開ける前に手を止めた

「なんて言うかさ、俺達アイドルも結局人間なんだよ。コウなんて特に完璧なアイドルに見えてただろうからショックだろうけど、人並みに恋愛するし、それが正しい相手とも限らない、欲にも負けるし、汚い部分もある。

あまり夢見過ぎるのは、君が辛いと思うよ」と独り言のようにつぶやた。


私は柳の後に付いて部屋を出て、言葉を交わすこともなく、そのままBARを後にした。


最後の彼の言葉は、私には懺悔に聞こえた。

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