13話 メンバーカラー青 アイの証言④
確かに浅葱だけは松浦の裏垢の写真に一切写って居なかった。
プライベートで遊んで一緒に写真を撮ったりする仲ではないのは事実だろう。
彼の自己申告通りファンの間でもアイのメンバーとの不仲説はよく上がっていた。
そしてグループはコウの人気が全てだったと言っても過言ではない。
グループとしての人気が出たのも、コウ目当てでグループを知った人が他のメンバーに移っただけ、彼が居なければ今推しているメンバーを知る機会すら訪れなかっただろう。
本来なら1人が受けるはずの栄光を、仲間に分配していたに過ぎない。
「人気の問題は、浅葱さん1人の責任ではないですよね?事務所の売り出し方とか、プロデュースにもよります」
「意外なことを言うんだね。ファンの人は推してる人が実力で人気な方が嬉しいんじゃないの?」
「それはそうですけど、今ある人気を自分1人の功績と思ってるアイドルがファンを本当に大事に出来るとは思えません」
それを言うと浅葱は少し驚いた顔をした。
「そう……だね」
「きっと殆どのファンは、ファンを大事にしているアイドルの姿を見てファンになるんですよ。
だから自分も含め他のファンの事も大切にして、感謝している人の方がいいアイドルなんですよ」
私の言葉に、浅葱は何も返答はしなかった。
コウにとっても、こんな形で解散する事がプラスになるとは思えない。
浅葱だってそんな事も分からない人では無さそうなのに
思い込みが全ての思考を邪魔している様で、今これ以上話を聞いても有益な情報は得られそうにない。
私は最後の確かめたい質問を投げかけた。
「浅葱さんは、解散の理由はコウだと思いますか?」
そう訪ねながら、私はカバンの中でナイフを握り締めた。
浅葱は形の良い眉を少しひそめながら、言葉を選んだ
「責任は俺達……いや俺の責任が大きいだろうな」
絞り出すように発せられたその言葉は、どう意地悪に聞いても彼の本心としか思えなくて
私はナイフを握る手を緩めた。
私が解散を提案しようとしたと同時に浅葱が口を開いた
「何か……ごめん」
「…え…何がですか?」
その私の心境の変化を知るはずもないのに、浅葱がタイミング良く話し始めたので、警戒してしまう。
「いや……こんな夢を壊すような話をファンの人にしてしまった事を、今更ながら後悔してるんだ」
そう言って項垂れた。
「でもアイドルはファンの人が思っているよりシビアな仕事なんだ。蹴落とし合いだし、才能がなければ容赦なく切り捨てられる。そんな汚い部分を見せたい訳じゃないけど、でも……見せない癖に分かって欲しい。そんなワガママだって分かってるんだけど、それが本音なんだ」
それはファンだって同じだ
眩しくて目に痛いほど輝いて欲しいけど、細部まで見て理解したい
それでどれだけ傷ついても、目が眩んで他のものが見えなくなったとしても。
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