12話 メンバーカラー青 アイの証言③
「それは、どんな内容だったんですか?」
「それ?」
「口論になり、……コウが止めた内容です」
「あぁ……」
浅葱は言い淀んだが、少し考えた後
「まぁもうニュースにもなってるし…いいか。
Dm(ディーマイナー)の話だよ」
意外なグループの名前に驚いた
1ヶ月程前に、メンバーの薬物使用が発覚して解散したグループだ。
「知ってると思うけど、あの件で彼らが解散した後、アスタリスクが後番組に入る事になったんだ。
初めての収録に行った時に、スタジオは最初から嫌な空気だった。
でもその番組のプロデューサーは妙に上機嫌で、他のスタッフに「俺がアイツらの事、警察にチクったんだ」て得意気に話し始めた。
「キメてるからいつも様子はおかしかった」「歩き方もこんなだった」とかわざと誇張した動きをして笑いを取りながらね。
でもDmはそのプロデューサーと何年も番組やってたのに、そんなの酷すぎると思って俺は思わず怒鳴ったんだ「仲間裏切ったのかよ!」って。そしたらコウが止めに入ったんだけど、その止め方が「まぁまぁ」とかじゃなく、見た事ない程怒ってたんだ。
その時は場を収めるためかと思ったけど、そのプロデューサーが居なくなった後も俺に謝ったりフォローしたりはしてくれなかった。正直俺は間違った事は言ってないと思ってたから、俺が自分の怒りのせいでプロデューサーと揉めて、仲間の仕事を奪おうとした事に怒ってるんだと思っていたけど、本当は俺の「仲間を裏切るのか」って言葉に、これから自分がやろうとしている事を咎められたみたいで嫌だったんだろうな」
そこまで話すと、浅葱は私が選ばなかった紅茶のペットボトルを少し乱暴に開けてグビグビと飲み、一気に半分程飲んでしまった。
そして少し震えるような深い溜息を吐いてから、続きを語り始めた。
「俺はダンスだけは得意な方だけど、歌とアイドルらしい振る舞いに関しては他のメンバーの方が上手い。
その証拠に、最初は俺の方が少し人気が高かったのに、次第にレンが追い上げて来て、最近では抜かれ始めた。
勿論それはショックだったけど、それ以上に問題なのは俺達の2位争いなんて全く関係ない程、人気は圧倒的にコウに集中していた事なんだよ。
丁度俺が番組の偉い人と揉めた時、グッツの売上の順位が出たんだ。
コウは当然の一位だったけど、この時俺は初めてレンに売上が抜かれたんだ。
いつもは皆を鼓舞するような事を言ってくれるから、この時もコウが何か言ってくれることを俺は期待したけど
コウは何も言わなかった。
その態度を見てレンが「もう順位なんか興味ないんだろうな」って呟いた時
本格的に見捨てられた気がした。
お荷物を抱えて居るより、1人でやった方が効率が良いと思ったんだろう。
解散の理由は、それだけの事だよ」
アイはそう言って一瞬顔を顰めたかと思うとフロントガラスの方に向き直り、揺れる肩から小さな嗚咽が聞こえた。
彼は震えた声で「ごめん」と呟くとそこから数分間、啜り泣きが漏れるだけで言葉は無かった。
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