六
「名前、聞いてもいいですか?」
「煌、
「わあっ、名前素敵。煌くん、飴ありがとう。蜂蜜のど飴のおかげで朝からパワーもらえました」
「はい……あっ、飴溶けてなかったですか?」
地味に中身の飴が無事だったか、心配だった件。
「それは大丈夫だったけど······何で?」
くりくりっとした大きな瞳に意識が吸い込まれそうだ。
「それずっと握りしめてたんで」
りりぃは「あはは、それで! 大丈夫でしたよ」と、今度は目を細めて笑う。
「私、自分の名前言ってなかったね。梨々花、
りりぃは、自分の名前の漢字について説明をしだした。
梨々花。
りり、じゃなかった。
梨の後に続く『々』の漢字。実はこれ踊り字と言うんだそう。時々や人々とかに使われてるものらしい。そんな物知りなりりぃが、やっぱり大人に見えた。
彼女は鞄からタオルハンカチを出した。
拭いてもしょうがないくらいにびしょ濡れになった俺の頭や服を、一生懸命に拭いてくれている。
この状況、情けないけれど嬉しさも込み上げてくる。
りりぃの計り知れない優しさに触れ、大好きの想いが溢れだしてくる。
追いかけてきてくれたのは俺に気づいたからなんだよな?
だとしたらあの時の俺、よっぽど情けない顔してたんだろう。
色んな感情が頭ん中を駆け巡る。
······やっぱり言おう。
言って振られて、すっきりして前に進もう。
だって俺、片想いしてるだけでまだ何も始まってない。
駆け出しの恋だけど恋をする楽しさを教えてくれたりりぃへ、ありがとうの気持ちを込めて想いを伝えようと思った。
小雨になった所で「ありがとうございました」と伝え、一人走って駅まで戻った。
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