第二章
四
特進クラスにいる
帰宅途中、突然のにわか雨に見舞われた。
(何か雲行きがあやしいなーとは思ってたんだよなあ、くそ)
折りたたみ傘も今日に限って晴れてるからいらないやって、家に置いてきたのが裏目に出た。やっぱりいつも通り鞄に入れておくべきだったと後悔する。
激しく打ち付けるように降るにわか雨の中、とにかく走って地下鉄の駅まで向かった。
ベタベタに濡れながらも何とか滑り込む。
傘は持っていなかったのに運よく汗を拭くためのフェイスタオルは持っていたので、それで濡れた顔や髪の毛を拭いた。
周りを見渡すと、俺と同じように突然の雨に降られ全身びしょ濡れの人が大勢いた。
──ふと、ある男女に目がいく。
その視線の先。
あの花屋で働いているりりぃと、その横にぴったりと寄り添う男性の姿があった。頭の中でその光景を瞬時に判断できた。それくらい高校生の俺にだってわかる。
彼女はどちらかというと見た目、良く言えばおっとりした感じ。悪く言えばどこか抜けていそうな感じ(こんな事、りりぃに面と向かっては絶対言えない)がする。
媚びてなくて自然で、心から笑えるような、そんな純粋さがある。
花で例えるなら、スイートアリッサムあたり。
その可憐な花は白くて小さい。
小さいけれど沢山集まったとき、その放つ輝きは無限大になる。彼女からはそんな優美さが感じられるんだ。
彼女と同じ場所にいるのがこんなに辛いなんて思わなかった。
離れよう。
二人は改札口付近にいるから帰るに帰れない。だから彼女に背を向けて外へ出た。
さっき濡れた髪や服を拭いたのに、再び雨を浴びたからその上から重なるように重く濡れた。
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