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「全ての質問に、お答えする事は出来かねます。ただ一つ、ここがどういった場所なのか、という事でしたら」


そう言うと、彼はもう一度、自身の顎髭を撫でる。


「ここは、生前、故人に寵愛を受けていた者が、その故人の紹介により訪れる事の出来る場所でございます」


彼が、黒いスーツのポケットから、見覚えのある、あの淡い水色のチケットを取り出した。


「それって…」


「ええ、友坂様に送らせて頂いたものです。紹介を受けた者は、この白縹色のチケットを手に、ここを訪れます。上映演目は、その者によって様々ですが、追憶や、走馬灯と呼ぶ方々もいらっしゃいます」


そこまで話した彼は、悩ましい表情で、顎から伸びる長い髭を、一つ、撫でる。


「ただ、何事にも、例外というものはありまして…。

と言うより、最近は例外だらけなので、今回の事が知れたら、流石に上からどやされそうなのですが、まあ、お気になさらず」


「故人に寵愛を受けていたって、どういう事?

後、例外って…」


「申し訳ありませんが、時間がないのです。もう、上映が始まってしまいますから」


まだ、納得の行っていない自分を他所に、彼は古扉を開け、僕を中へと誘導する。


「それでは、二人の翼が、蒼き大空へと旅立つ、その時まで、どうかごゆるりとおくつろぎ下さい」

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