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自分達が通う桜川中学校は、その名前にもあるように、桜の木が、学校まで続く一本道に沿って、川の流れのように林立しているのが特徴だ。


そして、その流れの終点、桜川中学校の正門前には、一際大きな桜の木が植えられている。


この、大きな桜の木に関しては、落雷が襲っても倒れなかったとか、桜川中学校が設立される遥以前から存在している、といった噂が、生徒達の間で囁かれているが、真相の程は分からない。


ただ、生徒達に限らず教師陣までもが、毎年、桜の花びらが舞う時期になると、この木の下へ集っている。


僕は今、そんな桜の木の元を、一人で訪れていた。


正門前で、雄大に構えるその姿は、どこか神々しさすら覚える。


日頃見ている姿と違うように感じるのは、夜桜が放つ、甘美な魔力のせいか。


いや、


「これは、蛍…?」


それはきっと、桜の木から発せられる、無数の燐光のせいに違いない。


辺りに漂う光は、蛍の放つものにも似ていたが、そう考えるには、大分季節がずれていた。

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