8
自分達が通う桜川中学校は、その名前にもあるように、桜の木が、学校まで続く一本道に沿って、川の流れのように林立しているのが特徴だ。
そして、その流れの終点、桜川中学校の正門前には、一際大きな桜の木が植えられている。
この、大きな桜の木に関しては、落雷が襲っても倒れなかったとか、桜川中学校が設立される遥以前から存在している、といった噂が、生徒達の間で囁かれているが、真相の程は分からない。
ただ、生徒達に限らず教師陣までもが、毎年、桜の花びらが舞う時期になると、この木の下へ集っている。
僕は今、そんな桜の木の元を、一人で訪れていた。
正門前で、雄大に構えるその姿は、どこか神々しさすら覚える。
日頃見ている姿と違うように感じるのは、夜桜が放つ、甘美な魔力のせいか。
いや、
「これは、蛍…?」
それはきっと、桜の木から発せられる、無数の燐光のせいに違いない。
辺りに漂う光は、蛍の放つものにも似ていたが、そう考えるには、大分季節がずれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます