第16話 資材切れ
樽を作れるかもしれない ---これはこの小さな組織の中での大きな進歩と言える。
地球基準の技術的な面での時代から見ても、4世紀分以上の飛躍だ。何より、複数の木材を継ぎながら水密性を保てるのはこれからの軍艦建造の見通しが立ったといっても過言では無い。武器、艦砲などは除くが、爆雷なら樽がこれからできるのだし何とかなりそうだ。馬や牛を徴収して、今、各鉱山資源を牽かせた車でここに運んで来て貰っている。まだどれも到着していないが、重要な硫黄や錫、銅、鉄そして硝石の鉱山にはすでに追加の人員と共に牛車の第二弾を送った。他は第一弾が帰って来てから小休暇の後にそのまま行かせれば良いだろう。
「兵舎の建設はどうだ?」
仲間の間で各現場のリーダーを決めたと報告に来てくれたのだが、(勿論フェリテにも報告に行ったらしい)目の前の彼は…誰だったかな…
「今は二つの兵舎を同時並行で建設しています。人手だけはあるので。一棟目とは若干遅れがありますが、そのおかげで二棟目ではより素早く建設が進められています。ただ、一棟目で都合の良い廃材は殆ど使い切ってしまったので、梁などの大きな部分に使う木材が不足しています。…何とか建つと思いますが、時間は結局資材の確保によって一棟目と同じぐらい掛かるかと。」
実は彼らが持ってきた資材は新たに切り倒した木ではなく、新市街の建物だった瓦礫なのだ。当然大きな破片は少なく、それを使い尽くしたらしいのだ。
「分かった。軍の余剰人員に伐採と製材を協力させるよ。」
「しかしそれでは乾燥とかも含めて半年はかかります。」
「今は耐えてくれ。より大規模な2回目の攻撃に備えるのには間に合うはずだ。」
「はい。」
「三棟目はレンガを試してくれ。これを士官用の兵舎にしようと思う。集会場とかも作って。だからレンガができるまで待っていて。誰かちょうど良さそうな人はいる?」
正直な所、初めに呼んだ文字を読めるリーダー達の名前はもう覚えていない…いや、一度も覚えた事はあったか?
「そうですね、彼なんかはどうでしょう?何より初期メンバーですし。」
3号棟の予定地を整地している班の班長だ。
「確かに土に慣れていて向いていそうだ。ありがとう。」
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