第15話 始動
寝食惜しんでの僕による近代的な軍事行動の集中特訓を終えた海軍司令のミズナシと陸軍司令シマントがトネと協力して、それぞれ戻って来た農民の中から兵士を選んだ。今は陸海合同で残りの少ない士官達を通して筋トレをさせている。陸軍5000に海軍1000程らしい。これからも補充するが、第一波はこの人たちで凌ぐ事になるだろう。午後に講習を行うらしい。…絶対に明日からは逆にするように言っておこう。
フェリテは災害からの復興で走り回っている。
建築班もまた避難民の中から大柄な人を選んで弟子として育てつつ兵舎の建設を進めていた。質の良い木材はその際に軍艦用に引き抜いた。他に使える物が無いか見廻っていると、樽があった。しかし、地球で言うところの紀元前の技術力しか無いこの国で作れないはずの代物だ。そこで近くに居た未来の工場長に聞いた。名前は…忘れた。
「あれは何が入っている?」
「漆です。しかし今の所用途はございません。」
「君は敬語を使わなくて良いよ。地位もさして差が無いし。ところで容器の樽の方は誰が調達した?」
「漆が出る木は見つけたのですが、適当な容器が無かったので探していたところ、『館』にこれがあったので使いました。」
それなら納得だ。帝国は戦列艦を作れる国だからな。
「この樽を再現できるか?」
「器用な者なら二日に一つなら作れるかと。」
樽が作れれば選択肢が一気に増える。
「二人までなら建築に従事している農民の中から引き抜いて良いからすぐに作り始めて。資材もある程度は使って良いから。」
「はい。」
「そして安定して作れる様になったら今度は船も作ってもらおうと思う。取り掛かってくれ。」
「…!」
彼は人を選びに歩いて行こうとした。
「あっ、その樽は自由にして貰っても良いけど漆は船を作る時にはある様にしてね。」
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