第4話 王国最高の修理士

最早何発撃ったか分からない。


ただ、もう車を襲う者が居ない事、そして狙撃手は彼一人だった事しか頭になかった。


我に返って、動かなくなった車に駆け寄った。


自動車ではなく牛も混じった大きな馬車だった。


すると、先程の襲撃者にしたように槍を向けられた。


「さっきあなた方の援護射撃をした者です。」


言った後にしまった、言葉の壁も考えてせめて英語で言うべきだったと思った。


「そうだったのかタマ殿?」


少し大柄な黒髪の男は槍を下ろして御者に聞いた。


「はい。おそらく。遠くで伏せていたのではっきりとは分かりませんでしたが、我々を助けてくれたのは間違いないです。」


「そうか。ところで其方の名は?」


「姓が赤原、名が颯。」


「赤原颯か。」


どうやら苗字が先な文化らしい。


「はい。ところでこの馬車…?は街に行くところですか?」


「そうだ。助けてくれたお礼に乗せて行こうか?」


「ありがとうございます。護衛もします。」


すると降りた御者が申し訳なさそうに僕達に話した。


「えっと…車輪が外されてしまったのですが…」


「どのくらいで直る?」


そう聞くフェリテの語気が強まる。


「いえ、直せません。」


「そうか…」


確かに手頃な木が見当たらないな、と思ったが外れた車輪を見て考えを改める。


「秒で直るだろ…」


作りもどうかと思うが、ただ楔が抜けて車輪が軸から外れただけだった。


「赤原殿、本当にこれが直せるのですか?」


フェリテが変な者でも見るような顔を向けた。


「部品は全部あるじゃ無いですか…こう組み合わせるだけです。」


部品を拾って直ぐに組み合わせて見せた。最後に道具箱のマルチツールで楔を強く叩いた。




「見事だ…我が王国の直属の職人にならないか‼︎」


「早く出ましょう。道中話を聞きますから。」


「それもそうだな。先を急ごう。」


変に話を拗らせて、このままこの辺鄙な所に置いて行かれる事を危惧したが、その気は無かったようだった。

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