第2話 実験、そして…

「先生!計算結果出ましたか?」


物理の先生に頼んでいたのは自分で設計している軽レールガン(一人で扱えると言う意味で軽機関銃に倣った)の理論の証明だった。なにしろ僕は理論の理解度とは対照的に、壊滅的に「計算」が苦手だ。


「理想的条件の元で最大94%。しかもループ部分を拡張すれば改善の余地がある。」


「やっぱり。低電流で動かせるから。」


「その代わり転がり抵抗と空気抵抗は大きいと思うよ。」


「いいんです。音速超えさせるつもりは無いので。じゃあ校庭で実験してきます。」


希望を胸に自慢の早歩きで廊下を抜けて行った。


「許可降りるかしら…」




許可が降りないのは分かりきっている。


法で規制されないレールガンだとは言え、


何しろ警察の拳銃より理論上は威力がある。


ましてはここは日本だ。


だから止められる前に一通りの射撃実験をしなければいけない。


いくつかの装置と道具箱が乗った敷いておいたシートの前まできた。




まずキャパシタをの充電ボタンを押して始める。


その間にまだ付けていなかったスコープをセット。


幾つかある鉄球の中からパチンコ球を選び穴に入れる。


テレビで見たように伏せて構えた。カサ、と落ち葉が鳴った。


充電器から本体を切り離した。


左手で小さなスイッチを押すと、


振動と共にカラカラと球が転がる音がし始めた。




準備はこれで整った。昂る心を抑えつつ、球が加速する音を聞きつつ待った。ゆっくりと引き金を引いた。


何も音がしなかった。


いや、逆にさっきまでの音と振動が消えたのだ。


遠くに砂埃が立つのが見えた。


そして抗えない強烈な睡魔に襲われた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る