第8話「脳内変換」

 いつもいつもて、

 いつもの如く…


 あっつい一日だった…



 ミィーンミンミンミンジィ~…

 ジワジワジジワジワジワワワワ…


 

 窓の外ではセミが鳴く。

 いつも思うが、あの体のサイズで凄い音量だよね…蝉って!



 ぼーっと眺めるTVとともに、ボンヤリとどうでもいいことを考える三十路のオッサン。


 見るでもないTVがBGM代わりに部屋に流れている。

 大画面とちゃぶ台。

 JS美少女とオッサン──


 超そぐわない光景です。


 それというのも、いつものようにユズが部屋に遊びに来ていたからで──

 こんなオッサンと遊んで何が楽しいのか、ユズはよく光司の部屋に来る。


 万年暇人の光司は特に嫌な顔一つせず、ユズのしたい様にさせているものだから、ほとんど託児所のようになっていた。


 3時くらいになれば、クゥと可愛らしいお腹の音を立てる小学生。


 健康そうな肌が眩しいスパッツ姿、薄いTシャツを押し上げる子供にしては豊満な双丘。

 その下のお腹をさすって恥ずかし気に顔を染めている。


 ヨシヨシと頭を撫ぜると、

 光司はおやつを準備する。


 さて、なにがあったかな~っと冷蔵庫を開けて食材を確認。


 今日はプレーンヨーグルトがあったから、粉砂糖をたっぷり混ぜて御馳走する。


 アリガトーと礼儀正しくお礼をいうユズの頭を優しく撫でてやる。

 嫌なそぶりも見せずニッコリと笑うその笑顔は天使のようだ。


 うーむ…可愛いぜ!!


 特に何をするでもなく、ナニもしない秋の昼下がり。


 蝉の声が変化したのを感じた夕方。

 その頃になると、セーラー服姿の部活帰りのエミが、汗のいい匂いをさせて、部屋に勝手に入ってくる。


 ユズをみると、「かわいー!」とか言って、即座にガシっと捕獲、ツインポニテ頭をカイグリカイグリする。


 美少女JSと美少女JCの戯れる姿──

 うんうん…ホッコリする光景じゃの。


 さてさて、腹ペコのエミには何を御馳走してやるかね~。と、そう考えて、シンクにいくと萎びたキュウリがあったのを思い出す。

 キュウリ、ヨーグルト、とくればあれだな。


 あとは、味噌!!

 これで作る簡単糠漬けもどきだ!


 【簡単糠漬けもどき】

 特徴:キュウリを適当に切り、

    ビニル袋につっこむ。

    ここに少々の塩を加えておく。


    さらにヨーグルトを3、

    味噌を7くらいの割合で入れる。


    好みにもよるので、ヨーグルト5、

    味噌5の割合でもよい。


    あとは、これをもみ込み、

    しばらく冷蔵庫で寝かせる。

    15~30分くらいで十分。


    水分が袋の底に染み出ていれば完成。


    これをボウルか皿に盛り付ける。

    糠っぽいものは洗っても、

    そのままでもどちらでもよい。

    ──好みで分けるべし。


    さわやかな酸味がたまらない。


    栄養はキュウリ由来なのでほぼ水分。

    塩分割と高め。

    調理時間15~30分。手間は30秒


 材料:キュウリ、塩、

    プレーンヨーグルト、味噌


「くぅあぃくぅあぃくぅあぃぃぃね~~~♪」

 何故かモアイのような表情をしたユズと、それをひたすら撫ぜ繰り回すエミがいた。

 頭を撫ぜすぎて、剥げてしまいそうな勢いだ。

「をいをい…エミさんや…ユズを撫でてもご利益はないと思うぞ」

 まるで、お寺の霊験あらかたな御神体を拝む勢いのエミに苦笑する。


「コージにぃ…エミ姉ちゃん暑いのぉ~…」


 部活帰りでホカホカのエミはかなりの体温だったようで、ユズは茹っていたのだ。

 しかし、「可愛いモノ撫でクリ症候群」に陥っているエミは、目を爛々らんらんとさせて気付きもしない。


 ユズよ…嫌だったら殴ってもいいんやで。


「エミさんや…ユズたん嫌がってますよ…」


 ホォレホレ、と。

 ───くわえたまえ~


 糠漬けもどきを箸に取ると、エミの半開きの口にねじ込む。


「くぅあぃくぅあぅぅううう、ふぐぅぅぅ…!?」


 ドロっとしたものをねじ込まれ、れたヨーグルトが口の端を汚す。

 JCが目を白黒させて、口の端から白い白濁液を零す。


 ───うぅぅむ、なんかエロいっ!!


 我が姪っ子たる制服JCが、口から白いドロドロとしたものを零す様を見て…、

 なぜか満足げに下種げす顔の光司センセー。

 

「うぇぇぇ、なにこれ~…」


 シャキシャキとキュウリを齧りつつも、余分な糠もどきを手のひらに吐き出す…

 唾液と混じり、糸を引きながら手に溜まる白濁液…口からベっと出す赤い舌と相まって…エロさ、当社比150%です!


 やるなエミよ…

 叔父さん興奮しました!!


「興奮しました! じゃないよ! 信じらんない、口にいきなり入れるなんて…」


 うぅむ…セリフまでかしてるじゃないかエミぃぃ。


 惜しむらくは、

「口にいきなり出すなんて…だな」


 おう、思わず言っちゃった! ───テヘ


「サイテー」


 俺はサイコー


「死ねばいいのに」


 エロさMAXで俺は本望です!


 喧嘩しちゃダメ! と、

 ユズが可愛い手でエミの口を押える。


「プフ! ユズちゃん、この邪悪なオッサンを成敗しなきゃ、なんだよ?」

「コージにぃは、邪悪じゃないよ?」


 うんうん、ユズはエエ子やの~。


「むぅ…どうしてこんな天使みたいな子が、叔父さんみたいなド変態をしたってるんだろう?」


 人柄ひとがらですな。


「チョーあり得ないと思います」

 失敬な姪じゃの!?


 シュッシュとティッシュを抜き、ドロドロの口回りと、ベタベタの手を拭いてやる。


 なんか、事後の後始末みたいで、これはこれでエロいし…、

 なんか後ろめたいなぁ……な~んも、してなんだけど。


 ───なんでだろ? アダルティなの見過ぎ?


「…ありがと」


 いえいえ、


「で、さっきの何?」

 あ、これ?


「キュウリの簡単糠漬ケモドキー♪」───ドラっぽく。

 パパラパーンとお皿に盛られたキュウリをかざして見せる。


「そんな四次元からの道具は嫌です」


 なんですとぅ?


「あ、でも、意外とおいしいね」

 まだ口に残るキュウリをかみしめている。

「だろ?」

「うん、塩味が優しいー」

 うんうん、部活で汗かいたら塩ッ気が欲しくなるだろうと思ってな!

 決して、萎びたキュウリの在庫処分ではない──きりっ

「あ、在庫なんだ…」

 う。

「へー、ユズちゃんにはヨーグルト丸々一個あげて、可愛い姪にはキュウリデスカァー」


 おぉう…

 そんなつもりではなかったんだけど。


 ってか、自分で可愛い言うない。

 ……可愛いけど。


ねんなよ。ほら全部やるから」

 ズイっとお皿の糠漬けもどきを差し出す。

 ちゃんとお箸もあるぞ。


「ふ~ん、キュウリなんかで騙されませんよー」

 とかいいつつ、ポリポリ食べ始める。


 食っとるやんけ!


 といいつつも、健啖けんたんさを見せられると悪い気はしない。


「コージにぃ……」

 おぉう、

 ユズよ…そんな切なそうな目で見るない!


 欲しいのか?

 キュウリ欲しいのか!?


 俺の萎びたキュウリが欲しいのかぁ!?


「欲しいのぉぉ…」


 ふっふぅぅぅい!?

 ぇぇぇい、くれてやるわ!!


 人が食べてるの見てると欲しくなる…それは分かる。

 とは言え、ちょこっと時間も掛かるし、面倒くさい…

 エミはと言えば、なんだかやたらと気に入ったのか、ほとんど食べつくして、口いっぱいにモッシャモッシャと頬張っている…

 ──リスかね君ぃぃ?


 しょうがないと、やおら起ち上ると、冷蔵庫にある萎びたキュウリを取り出す。


 同じ工程を踏むにもヨーグルトは品切れだ。

 それに時間がかかる。


 さて、

 あれで行くか!


 男メシの本領発揮だぜぃ!!


 本日二度目の男メシ!


 全国の巨乳ママ必見。

 必見なだけに、巨乳を見せろ。…───じゃねぇぇっっ


 老若男女、ロリっ子から老婆趣味、そして棺桶までの幅広い層に試してほしい。


 我が可愛い妹分たるユズに「欲しいのぉぉぉ~」なぁんて懇願されちゃ~作るっきゃねぇ!

 そうだろ?


 とは言え、元来がグウタラ体質の光司さん。

 チャッチャチャ~と作れるものしかやる気がない。


 言ったはいいが、器具の準備すら面倒くさい…

 

 ……


 …


 しゃぁねぇ…やるかにゃ~。


 つってもあれだ、包丁を出すのも面倒なので、───…まず、キュウリを手でボッキンと半分に折る。

 そんでもって、ヘタは口で噛み切って───「ポゥ」と三角コーナーに吹き飛ばす。


 幾分水分を失ったしなびたキュウリ、そいつを指圧で表皮を潰し、何カ所かに圧迫痕を付ける。


 あとは、塩をザクっと手で掬(すく)って、荒くもみ込み、浸透させると、ザッと振るって余分な塩を吹き飛ばす。


 小皿にごま油をたらすと、その上をキュウリを転がし、傷口のようになった圧迫痕に吸い込ませると…完成!!


 ───テッテレ~♪


 最後に味の素を多めにかける。

 これが重要だね。


【旨塩キュウリ一本付け(ハーフ)】

 特徴:半分に折ったキュウリに傷をつけて、

    塩とごま油で味を付けただけの簡単調理。


    染み込みが薄いため味は淡泊になりガチ。


    無理やり味の素で旨味を付けている。

    栄養はキュウリ由来なのでほぼ水分。


    塩もみのため塩分高め。

    ごま油由来のカロリーもある。

    調理時間2分。


 材料:キュウリ、塩、ごま油、味の素


「お、ま、た、せ~!!」

 バーンと効果音を付けながらユズに差し出す。


「…なんか違くない?」

 糠漬けモドキを食べながら、横からエミが突っ込む。


 知っとるがな!

 君が、全部食うてしまうから代理品なんじゃい!


「白いのないの?」


 ユズがちょっと不満そうに、エミの口から新たに垂れる味噌ヨーグルトを指す。


「あー白いのはさっき、ユズとエミに出しちゃったからな~」


 ヨーグルトと言ってくれ……なんかエロいからさ~、

 え~君たちぃぃ!


「叔父さん…ちょいちょいエロい単語に脳内変換してない?」


 ギク…


「シテマセンヨ」


 ジト~っと、エミが睨んでくる。


 さすが俺の姪。

 団地若妻シリーズでアンアン言ってるシーンでも動じないだけある。

 そして、俺のせいで大分(だいぶ)、脳が侵(おか)させれてるな、ピンク単語に!


 明らかに不審者を見る目。


「ユズちゃん…、この叔父さんに変なことされたら、お姉ちゃんに遠慮なく言うんだよ」


「コージにぃ、変なことしないよ? 昨日も大きくて硬いアイスの出してくれたよ? 顔じゅう白いバニラのたっぷり付いちゃった~!」


 ……


 …


 Σ


 をぃぃ!

 ユズぅ、

 ユズさぁん?!


 言い方、言い方ぁぁぁ


 なんか俺が小さい子に、悪戯いたずらしたみたいになっとるがなぁぁぁぁぁ…


 悪戯したみたいになっとるがなぁぁぁ…

 なっとるがなぁぁぁ…

 がなぁぁぁぁ…

 ぁぁぁ…


 ふっふぅぅぅい!!!


「サイッテー」


 あぁん、もぅ!

 ほらぁ、

 エミさんが、俺をゴミを見る様な目で見てるよぉぉ。


 やめて~~~~!!!


 ちょっと気持ちええがなぁぁ!!

 ええがなぁぁ!

 がなぁぁ!


 ふっふぅぅぅい!


「叔父さん、後でちょ~~~~と、だけ…お話があります」

「あ、はぃぃんん」


「??」


 ユズたぁん…


 自分の発言に気付くことなく、キュウリをパクリと齧るユズ。


「おぃひぃ~♪」

 実に幸せそうにキュウリを齧っていた。


 ※


 姪から、ご褒美…改め、お説教染みた小言を言われ、「ハイす、ハイすぅ」と適当ぉ~に、神妙な顔で項垂れると、ようやくエミが解放してくれた。


 そんなオッサンとJCのやり取りなんぞ見もしないユズ。


 子供向けのアニメがTVで流れ始めると、ユズは興味を失ったかのように、叔父さん&エミを放ってTVに夢中になっていた。


「もう、子供にあんまり変なこと教えないでよね? このくらいの子は周りの影響を受けやすいんだからっ」


 はい、エミさん見てるとよくわかります。


「はぁぁ、まぁ、いくら叔父さんが、スケベで変態でスケベだとしても、小学生に手を出すようなことはしない、ってのは分かってるけどさ」


 当たり前です! ──ってかスケベって、二回も言うないぃぃ


 まったくも~ユズたんに懸想(けそう)なんてしませんよ…可愛いけどね。

 女はJKから、


 でも、オッパイは特例です。

 オッパイがデカいなら、俺はロリでも行ける気がするぅ!


 斉藤ママのオッパイを基準とするなら、

 あの見事な美事なオッパイは、コスモ…、いや……太平洋です!!!


 太平洋並みのオッパイを誇るJS…そんなもんいたら…ゴクリ


 うむ、いけるな!!!


 とはいえ、ロリは犯罪。

 ダメよ犯罪。


 オパイは正義!

 正義は警察!

 警察オパイ万歳!


 オパーイ!!

 オパーイ!!


 ジィィィク、オパイ!!


 故に女はJKから、

 日本国が16才からの結婚を認めてるぅ!


 そこんとこから言えば…

 エミよ…お前はあと数年、──叔父さん期待しちゃうよ~

 あ、でもオッパイは、……まぁ琵琶湖くらいかね(笑)


「殺してほしいんですね?」


 はぅ!

 また出てた。

 この口めぇぇ。


「と・に・か・く! 子供の前で、変なことしない、変なもの見せない、変な人生送らない・・・・・・・・、いいです?!」


 えー……最後のドゆ意味ぃ?


「分かったら叔父さんはお皿とか洗ってきて! そしてぇ、私はユズちゃんを愛でますぅぅ、…可愛ぃぃねぇぇぇウリウリウリウリウリィィ」


 言うだけ言って、ユズを背後からグワバと捕まえて相変わらず、頭をカイグリカイグリしている。


 うーん、だから、ご利益はないんだよ?

 知ってる?


 あ、でも、斉藤親子だから、「巨乳のご利益」はあるかもね。

 ユズも、ああ見えて結構立派なんですよ?

 ──琵琶湖の誰かと違って、瀬戸内海でっせ!


 そうなんです、意外と大きいんですよ~


 そう、

 エミちゃん…お前よりもな(笑)


「あとで殺しますね」


 はぅあ、また口に出てた!!


 プーンとそっぽを向きつつ、ユズを愛でているエミ。

 しかし、見たぞ!



 ──こっそり、自分の胸とユズのソレを見比べていたこと、俺はしっかりと見たぞ。ケケケ。






 安心しろエミ!

 需要はある!

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