第2話 『イチャ・モン星人の介入』

『再度、確認いたしますが、これは、フィクションです。この世界とは、無関係です。』


        🙇



 ミス・テリーが言うには、こうである。


 『イチャ・モン星人は、広大な領土を宇宙に築いている。ま、ダジャレーさんはご存じのとおり。実は太陽系も、彼らが主張する領土の一部なんだけど、あまりに広すぎるのと、たいして目につくような技術もないし、へたに人類に事実を告げると、大混乱になりかねない。しかも、イチャ・モン星人にしても、簡単には扱えない、いわゆる『火星の女王さま』が、太陽系形成時から居座っていて、まあ、イチャにしては、めずらしく、領土を割譲した形になってるわけさ。女王さまには、領土欲といふものがない。でも、すっごく、強い。全宇宙の破壊だって簡単にできるから。ま、太陽系を与えておけば、まあ、それで満足なわけよ。』


 『まあ、そうですか、なあ。』


 なにを、いまさら、という雰囲気で、ダジャレーが答えた。


 『しかも、最近は、異次元に地獄を建設するのに、一生懸命だしね。天国のほうは、完成しているらしいが、おいそれとは、入れない。地獄は、二泊三日のツアーがあるらしいけど。天国のほうは、ない。ところが………』


 『はいはい。ところが? わんわん同盟でもできましたか?』


 『おー。さすが、ダジャレー先生。そうなんですの。問題は、まずは、シベリアンハスキーの、ぷーちゃんです。かれが、このあたりの、ワンちゃんのナンバー・わんです。しかも、ぷーちゃんは、起源を辿れば、イチャ・モン星人のワンちゃんなんだな、これが。』


 『はあ? 地球のワンちゃんより、強いと?』


 『たしかに、強い。しかも、地球人間より、知力がある。いや、かの、ツヴァイシュタインを越えると言われる。』


 『まあさかあ。』


 ダジャレーが、ずっこけてみせた。


 ずで〰️〰️ん。


 と、椅子もろとも、ひっくり返ったのである。


 仕方がないから、ノットソンが、引っ張り起こした。


 『そのとおり。ぷーちゃんからしたら、人間の相手なんか、やってられないのだとか。それで、仲間を増やすように段取りし出した。あの三匹は、単なる近所の幹部というだけで、いまや、地球上各地に拠点をひらいているわ。まもなく、全人類の支配に乗り出すわ。あ、たしか、むかし、そういう漫画がありましたでしょう? 『名犬トロツやん』だったかしら。史上まれにみる、傑作でした。』


 ノットソンが口を挟んだ。


 『狂犬トロツキーでしょう。まさに、20世紀最高の作品でしたな。』


 『ああ。そうね。ぷーちゃんは、ワンちゃんの能力強化剤を開発した。食べると、人間の10倍の知性になるとか。現在爆発的増殖してる。』


 『どこで、作ってるの?』


 と、ノットソン。


 『もちろん、日本。あの、例の核爆弾屋敷の跡地ね。』


 『やれやれ。ここから、15分だ。でも、いったい、だれが?』


 『それなんですの。不思議なことよね。当局が、秘密裏に大捜索やって、もう、残党はいないはずなのに。』


 『ふん。で、マドモアゼルは、ぼくに、なにをせよ、と?』


 『ふふふふふへへへへへへほほほほほほほ。』


 それは、まさに、宇宙妖怪顔負けの、不気味な笑いであった。




      ・・・・・・・・・・・


              つづく

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『冥探偵ダジャレーとノットソンのある日常』 その1』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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